制度解説

処遇改善加算の導入・運用方法に関するまとめ

処遇改善加算の導入から実績報告までで抑えるべきポイントとよくある質問をまとめました。

処遇改善加算の方法

具体的な導入方法を知りたい方は、以下の記事をご参考ください。

・処遇改善加算の具体的な導入方法

総則を知りたい方は、引き続き本記事をご参考ください。

 

処遇改善加算とは

  1. スタッフのスキル向上、労働環境の改善
  2. 研修制度の充実による、事業所の質の改善

以上の2点が制度趣旨となります(かなり噛み砕いて説明しています)

なお、本記事は以下の内容を参考にしています。

平成29年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

 

対象となる職種

現場職員が対象です。

例:職業指導員、生活支援員、ホームヘルパー、児童指導員、指導員、保育士

※管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、相談支援員等は支給対象外

 

処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲとは?

算定要件が4つあり、それらをいくつ満たせるかで算定できる加算が決まります。

4つの条件とは以下のとおりです。

  1. キャリアパス要件Ⅰ ⇒ 職位・職責・職務内容等に応じた賃金規定を整備する
  2. キャリアパス要件Ⅱ ⇒ 研修の実施、研修受講の機会を確保する
  3. キャリアパス要件Ⅲ ⇒ 経験年数、資格等、職員評価、によって昇給する仕組みを賃金規定等に導入する
  4. 職場環境等要件  ⇒ 賃金改善以外の処遇改善を実施する

※導入にあたっては就業規則、事務連絡などにより全スタッフに処遇改善の内容を周知すること

全ての条件を満たすことで加算Ⅰ、その他によりⅡ以降の加算が算定できます。

以上の点を踏まえたうえで厚労省の書類を見ると、理解しやすいはずです。

図:算定要件ごとに取得できる処遇改善加算の一覧

 

補足

従来の処遇改善加算では、職位と賃金規定を定めるだけの内容でした。

29年度から、キャリアパスⅢ「昇進するための明確な基準」を設けることで、職員の給与改善を実現できるようになりました。

 

キャリアパスとは、具体的に何をしたらいいのか?

就業規則に加えて、「賃金規定、研修計画もしくは職員評価表など」を提出する必要があります。

書式は任意なため、事業所に即した内容で作成して構いません。

賃金規定の中に「職位、賃金、評価基準(資格、年数、評価のどれかで構いません。併用可)」を記載します。

キャリアパスⅠとⅢのイメージは以下のとおりです。

「職位・月給」がキャリアパスⅠの該当部分、「経験・資格・評価」がキャリアパスⅢに該当します。

図:キャリアパスⅠとⅢを導入した賃金規定の例

評価基準については、①経験・②資格・③評価の全てを組み合わせても構いません。

各事業者様の使用する就業規則、賃金規定をもとに評価の仕組みを導入してください。

 

キャリアパスⅡについては、以下のように年間研修計画等を作成してください。

図:キャリアパスⅡのための研修体制の概要

書式、記載内容については任意です。申請・実績報告時の行政への提出義務もありません。

 

職場環境等改善とは、具体的に何をしたらいいのか?

届出書に、職場環境の改善項目があります。1つでも実行していただければ、要件を満たします。

項目には、以下のようなものがあります。

外部研修の受講  /  新人職員のためのメンター制度の導入 / タブレット等の導入による業務効率の改善 / 管理者層のマネジメント研修の導入 / 育児休養、事業所内保育の導入 / 定期的なミーティングによる職場環境、支援内容の改善 / 事故、トラブル発生時のマニュアル作成による責任の顕在化 / 健康診断、カウンセリング、分煙、休憩室の確保

以上により、最高倍率である処遇改善加算Ⅰ(キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、職場環境等改善)を満たすことができます。

必用書類について

届出書、加算計画書、事業所一覧、就業規則、給与規程、労働保険関係成立届(確定保険料申告書、納付書・領収書)等の納入証明書 等

 

予想される処遇改善加算支給額の計算

申請時に、処遇改善の見込み受給金額を算定する必要があります。

いくら支給されそうか、図をもとに計算してみましょう。

図:加算率の参考

 

1ヶ月当たりの支給額の把握方法

1ヶ月の総請求金額(加算・減算込み)×処遇改善加算の導入率  =           円

【年間の支給金額(概算)を把握方法】

1ヶ月あたりの支給金額×導入月数 =           円

 

例:月200万円の請求額の放課後等デイサービスで処遇改善加算Ⅰを導入した場合

月額:200万円×0.081=16万2千円/月

年額:16万2千円×12ヶ月=194万4千円/年

年間194万4千円を、スタッフへの給与改善として使うことができます。

この額に加えて、事業所負担で1円以上、賞与や手当を現場職員に支給します。

ポイント:各月の利用実績が多ければ多いほど、支給額も増えます。

従業員に支給すべき金額について(申請時)

「去年までボーナスを支給していたが、今年は廃止して、代わりに処遇改善加算を当てたい。可能か?」という質問をよく頂きます。

結論できないと思ってください。

図:申請時の予定年間支給金額について

ボーナスを減額することで、←の予定支給額(改善額)が減少する可能性があります。

処遇改善加算の見込み受給金額(→)を下回る場合、加算の算定条件から外れてしまいます。

この場合、処遇改善加算を申請することができません。

ボーナスの額が少額である、または寸志を支給していた場合であれば処遇改善加算による支給の余地があります。

※←は「処遇改善加算、賞与、各種手当ての合計」です

 

従業員に支給すべき金額について(実績報告時)

処遇改善加算のみでスタッフの給与改善を行ったり、余らせた分を事業所の利益とすることはできません。

年度末以降7月末までに、処遇改善の年間受給額・職員への総手当て支給額を集計して、指定担当課へ報告書を提出します。

図:手当て・賞与等の支給方法

手当て、賞与として現場職員に支給した金額の合計が、処遇改善加算の受給額を超えていれば大丈夫です。

※←は「処遇改善加算、賞与、各種手当ての合計」です

 

処遇改善加算の実績報告について

処遇改善加算は年度ごとに申請、実績報告を行います。

3月で算定は終了し、2ヶ月遅れで給付金が振り込まれます。

5月から2ヶ月後の7月末までに実績報告を提出します。

図示すると以下のようになります。

翌月3月 4月 5月 6月 7月末
算定終了 3月給付金の振込 実績報告の提出〆日

← 処遇改善加算の支給完了 →
(原則、事前計画どおりに支給すること)

事前計画どおりに手当てを加算できるとは限りません。

実際の手当・処遇改善加算の支給額を「実績報告」として所定書式に沿って作成してください。

毎月の記録について

実績報告のためには、毎月の記録として確実に以下の情報を記録してください。

勤務実績記録(現場職員の、毎月ごとの常勤換算数、給与額、各種手当の支給額、毎月の処遇改善加算の支給額)

実地指導に備えて、以下の書類を整備してください。

処遇改善加算導入についてのスタッフへの周知(事務連絡等)、研修記録、人事面談の記録など(キャリアパス要件Ⅱの内容に応じる)

処遇改善加算導入にあたっての注意点・よくある質問

ボーナスを廃止して、その分を処遇改善加算に充てることができるか?

理窟としては出来ますが、実行するのは難しいです。

処遇改善加算の導入条件として「加算・手当の合計で、職員の給与合計を前年度の支払実績以上に改善すること」が定められているからです。

ボーナスを減らすことで、前年度の支払実績を超えられなくなる恐れがあります。

詳しくは前述した、従業員に支給すべき金額についてをご参考ください。

 

必ず計画どおりに給付金を支給しなければならないのか?

「計画」であるため、実際の事業運営によって金額が変わることはあり得ます。

あくまで「処遇改善加算」以上に「手当+処遇改善加算」が超えていれば、手続き上は問題ありません。

 

全員に支給しなければならないのか?

全員に給付する必要はありません。特定のスタッフに支給することもできます

例:常勤保育士の資格手当として支給する、など

 

給付について

事業所が一切の自己負担なく、処遇改善加算のみでスタッフの給与改善することはできません。

逆にいえば、1円でも事業所が手当て等を負担すれば算定対象となります。

 

加算の給付方法について

賞与、寸志、手当て、職員の給与に反映するのであれば何に使っても構いません。

ただし管理者、サビ管、相談支援等への支給は実績に含められません。

 

支給月について

届出書に具体的な支給方法を記載します。申請した支給月に、給付金をスタッフへ支給してください。

遅くとも、実績報告期日である7月末日までに支給完了してください。

 

全額返還処分について

処遇改善加算の算定要件を満たさない、処遇改善加算を全てスタッフに支給しきれなかった場合、実績報告を期日までに行わなかった場合、行政指導として全額返金を受ける恐れがあります。

 

毎月の記録整備について

賃金台帳により各スタッフの各種手当の記録、勤務実績記録表等によるスタッフの各月常勤換算数、勤務時間数、処遇改善加算の支給額を必ず控えてください。

(やっていなかった場合、実績報告の事務作業がかなり煩雑になります)

 

毎月の処遇改善加算支給額の確認方法

各事業所の電子請求受付システムからログインして、紹介一覧をご確認ください。

毎月の支給金決定通知とともに処遇改善加算に関する書類を取得できるようになります。

 

研修記録について

毎月の研修に使用した書類を、事業所で保管してください。

研修で使用したスタッフのメモなどを残しておけばより安泰です。

加算の計算方法

各月の基本単価に、加算・減算を加えた総請求金額をもとに支給額を計算できます、

 

まとめ

  • 処遇改善加算を導入することで、スタッフの人件費を補助することができる
  • スタッフのスキル、モチベーションが向上することでサービスの質を向上できる
  • 利用実績が増えるほど加算の支給額が増える
  • 導入のためには、様々な運用ルールを守る必要がある

以上となります。

はじめて処遇改善加算を導入する事業者様のご参考になりましたら幸いです。

弊所がサポートすることももちろん可能です。

ABOUT ME
吉川彰太郎
障害福祉施設の開業、運営コンサルティングに特化した行政書士です。 障害児者やその家族の人生を支えるべく、事業所がより質の高いサービスを提供できるよう様々な情報発信を行います。

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