複数の事業所を利用する場合「利用者負担上限額管理」という事務作業が発生します。
利用者のお金に関する事務手続きでとても重要で、行政手引きも多く出ていますが、一見すると複雑で分かりにくいこともあります。
この記事は
- 複数事業所の利用がある事業者
- はじめて請求業務を行うことになった請求業務担当者
- 利用者負担額上限額管理の手順を共有したい事業者様
を対象として、利用者負担上限額管理を行うにあたって大切なポイントを整理しました。
気になるところから読む
利用者負担上限額管理で抑えておきたい重要なポイント
利用者負担上限額管理加算とは?
複数事業所を利用する場合、利用者の自己負担額を調整する必要があります。
利用者の上限額管理を行った事業所が対象者1名につき
- 150単位/月
の加算を算定できます。
利用者負担上限額の管理方法とは?
保護者や本人(以下「保護者等」と表記します)が複数の事業所を利用すると、通常ならそれぞれの事業所に利用料が発生するように思えます。
しかし所定の手続きを踏むことで、保護者等が負担する利用料が1事業所分で済むようになります。
本項では保護者と事業者が行うべきことについてまとめていきます。
保護者に行っていただく手続きの流れ
1.メインとして利用する事業所にお願いする
複数の事業所を利用する場合に、最も利用の多い事業所(もしくは最も利用料の多くなる事業所)に上限額管理をお願いする旨を伝えます。
2.市町村に対して書類を提出する
保護者から市町村に対して
- 利用者負担上限額管理事務依頼(変更)届
- 受給者証の原本
を提出します(事業所によって手続きの代行を認めているエリアもあります)。
※注意点
事業所利用開始月の翌月10日までに書類を提出してください。
利用料が3割負担などにならず、全額自費になる恐れがあります
参考として資料を添付します。
実際には必ずお住まいの市町村の依頼届を使用してください。
※(変更)と書いてあるのは、新規で依頼をかけるときだけでなく、管理事業所を変更するときにも同様式を使うためです
図:利用者負担上限額管理事務依頼(変更)届の記入例
3.1~2週間程度で受給者証が発行される
保護者等が依頼した事業所名が、受給者証に反映されます。
これで保護者に行っていただく作業は完了です。
図:受給者証の参考
利用者負担上限額管理を行う(=加算を算定する)事業者様がすること
1.他事業所への連絡
利用者負担上限額の管理依頼を受けたら、必ず他事業所に連絡してください。
- 複数の事業所を利用することによって、支給決定量(1カ月に利用できる回数)をうっかり超過しないようにするため
- 利用料の上限額を管理する事業所から、その他の事業所に対して利用者負担額一覧表を作成してもらうことを周知するため
2つの目的があります。
〇必ず抑えるべき重要なポイント
逆に、新規利用者を受け入れる場合は、かならず他事業所の利用がないかを確認してください。
もし他に利用している事業所があれば、利用者負担上限額管理を行う必要があるためです。
2.毎月3日までに利用者負担額一覧表を他事業所から受け取る
利用者負担上限額を管理する事業所が、他の事業所から「利用者負担額一覧表」を受け取ります。
ファックスでもメールでも構いません。
慎重に個人情報を取り扱う事業所様などだと、利用者名など個人を特的できる部分を墨消しすることもあります。」
他事業所における
- 総費用額
- 利用者負担額
の2点を知る必要があります。
〇ポイント 原則、請求月3日までに受け取ること
請求業務がストップしてしまいます。
もし請求月3日を過ぎても連絡がなければ、管理事業所から他事業所に対して確認の連絡をしましょう。
参考:東京都品川区(URL先から取得できます)
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kenkou/kenkou-syogai/kenkou-syogai-siryo/hpg000001643.html
図:利用者負担額一覧表の参考
3.6日までに管理事業所が利用者負担上限額管理結果票を送付する
上限額管理事業所が、他事業所に対して利用者負担上限額管理結果票を送付します。
本工程で利用料が確定するため、複数事業所を利用している利用者でも請求処理を完了までもっていけるようになります。
管理事業者は、請求ソフトにおいて
- サービス提供実績記録票
- 請求明細書
に加えて
- 利用者負担上限額管理結果票
も国保連に送付することになります。
例:利用者負担上限額管理結果票
つまづきがちな論点解説「上限額管理結果1、2、3って?」
利用者負担上限額の管理結果は1、2、3の3つの分かれます。
利用者負担上限額管理結果1
「管理事業所で利用者負担額を充当したため、他事業所の利用負担は発生しない」
たとえば受給者証に定められる利用者負担上限額が4,600円だった場合で、
- 管理事業者での利用料 12,000円
- その他の事業所での利用料 5,600円
だとしたら、上限額4,600円を超えてしまっています。
この場合、
- 管理事業者での利用料 4,600円
- その他の事業所での利用料 0円
に調整します。
管理事業所のみが利用料を受け取るため、管理結果1に該当します。
利用者負担上限額管理結果2
「利用者社負担額の合算額が、利用者負担額以下のため、調整事務は行わない」
たとえば受給者証に定められる利用者負担上限額が4,600円だった場合で、
- 管理事業者での利用料 2,000円
- その他の事業所での利用料 合計1,200円
だとしたら、上限額4,600円を下回っています。
それぞれの事業所が利用料を受け取ることができて、利用料の調整がいらないため、管理結果2に該当します。
利用者負担上限額管理結果3
「利用者負担額の合算額が、負担上限月額を超過するため、下記のとおり調整した」
たとえば受給者証に定められる利用者負担上限額が4,600円だった場合で、
- 管理事業者での利用料 3,800円
- その他の事業所での利用料 合計2,500円
だとしたら、上限額4,600円を超えてしまっています。
この場合、
- 管理事業者での利用料 3,800円(取り分そのまま)
- その他の事業所での利用料 合計800円(上限4600円ー管理事業所3800円)
に調整します。
それぞれの事業所が利用料を受け取ることができるものの利用負担額の調整を行ったため、管理結果3に該当します。
4.上限額管理結果が確定したら保護者等に交付する
上限額管理結果が確定したら、保護者等に交付して署名押印を受けます。
そののち、管理事業者から
- 他事業所
- 保護者等
に、管理結果票の写しを送付します。
署名の時期について、実務的には「できるだけ早めに署名をもらうこと」とされています。
以上で利用者負担上限額の管理は完了します。
複数の事業所を利用している利用者について、毎月この作業を行います。
つまづきがちな論点解説2 利用者負担額上限額管理加算を取れるケースと取れないケースは?
ポイントは「利用者負担額管理の事務を行ったかどうか?」です。
①上限額管理事業所のみを利用し、他の事業所の利用がそもそもない月
利用者負担額の調整事務はありませんので、加算算定できません。
②上限額管理事業所及び他事業所を利用した月
自社と他事業所間での利用料調整事務が発生するため、加算算定できます。
③上限額管理事業所の利用がなく、他の事業所のみを利用した月
自社の利用実績が0回だったとしても、当月利用料が0円だった旨および利用者負担上限額管理結果票の発行・交付等が、発生するため、加算算定できます。
参考:「令和3年愛知県集団指導資料p.63他」https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/376597.pdf
利用者負担上限額管理のまとめ
複数の事業所を利用するときに発生する手続きです。
管理事業者が保護者や他事業所にアナウンスしていきますが、確認漏れすることもありえます。
新規利用者については必ず手帳を確認して、すでに他事業所を使っているようであれば必ず上限額管理の件について、訪ねるようにしましょう。
参考資料
世田谷区(「利用者負担の上限額管理方法について」https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/002/017/d00140159_d/fil/jyougennkannritejyunn.pdf#search=’%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%80%85%E8%B2%A0%E6%8B%85%E4%B8%8A%E9%99%90%E9%A1%8D%E7%AE%A1%E7%90%86′)
WAMネット(「利用者負担の上限額管理方法について」https://www.wam.go.jp/wamappl/bb15GS60.nsf/0/66544aa30f5a5be9492570e30016d12b/$FILE/tsuika5.pdf#search=’%E5%88%A9%E7%94%A8%E8%80%85%E8%B2%A0%E6%8B%85%E4%B8%8A%E9%99%90%E9%A1%8D%E7%AE%A1%E7%90%86′)
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