こんにちは。ヨシカワです。
弊所は愛知県、名古屋市を中心に障害福祉事業の申請、運営サポートを行っている行政書士事務所です。
今回は障害児相談支援事業の収支計算を行いました、
地域によってはまだまだ担い手がすくなく、利用したい施設があっても受給者証発行が間に合わない、という課題もあります。
こうした地域の課題を解消するための手法として、相談支援事業所の自社開設が考えられます。
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相談支援事業の収支計算解説
入金額の変動要因
以下の要素によって、月の入金額が変わります。
前提1:新規、更新、それぞれ何件計画を作成したか
1人の相談支援専門員が作成できる計画数は、原則月39件までです。
超過して計画を作成することもできますが、報酬の額が半減します。
図1.新規利用時の報酬額(児)
新規計画作成 | 報酬額 |
Ⅰ:39件/1専門員まで | 1,620単位/月 |
Ⅱ:40件以上/1専門員 | 611単位/月 |
図2.更新時の報酬額(児)
計画更新件数 | 報酬額 |
Ⅰ:39件/1専門員まで | 1,318単位/月 |
Ⅱ:40件以上/1専門員 | 659単位/月 |
前提2:直近6カ月で作成した計画数
月あたり39件を超える月が出てきそうになった段階で、以下の手法によりチェックすることをお薦めします。
「1カ月の処理件数の算定方法」
- 直近6カ月間の合計支援件数
- 直近6カ月間の平均相談支援専門員数
- ①÷②をする(小数切り捨て)
例①39件未満の場合
- 直近6カ月の合計 180件@6カ月
- 直近6カ月間の平均相談支援専門員数=1、1、1、1、1、2(名)=計7名
- 180件 ÷ 7名 = 25.7件 ≒ 25件/月
⇒ 新規、更新ともに基本報酬Ⅰで請求する
例②40件を超える場合
- 直近6カ月の合計 320件@6カ月
- 直近6カ月間の平均相談支援専門員数=1、1、1、1、1、2(名)=計7名
- 320件 ÷ 7名 = 45.7件 ≒ 45件/月
⇒ 新規、更新ともに基本報酬ⅠおよびⅡを組み合わせて請求する
補足:基本報酬ⅠおよびⅡを組み合わせて請求する、とは
- 契約日が最新の障害者
- 契約日が最新の障害児
の順に、基本報酬Ⅱによって請求事務を行います
- 41件目 ⇒ 2019年9月30日 成人A ⇒ Ⅱ型(低)
- 40件目 ⇒ 2019年9月20日 成人B ⇒ Ⅱ型(低)
- 39件目 ⇒ 2019年9月15日 児童C ⇒ Ⅰ型(高)
・高知市(30年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQandA vol.1)
前提3:加算によって、入金額が変わる
様々な機関と連携することによって、加算を取得できます。
密な計画を作成するためにも、積極的に算定することをお薦めいたします。
基本給付費の発生条件
以下のようなサービスを提供することによって、基本報酬が発生します。
A.基本給付費(障害児支援利用援助)
サービスの利用開始までのサポートです。
以下いずれかの条件を満たすと、給付費を請求できます。
- アセスメント作成にあたっての児童宅への訪問による障害児および家族への面談
- 障害児支援利用計画案の本人および家族の文書による同意
- 障害児支援利用計画“案”および障害児支援利用計画の家族への交付
- サービス担当者会議等の開催による担当者への説明および専門的な意見の徴収
図1.新規利用時の報酬額(児)
新規計画作成 | 報酬額 |
Ⅰ:39件/1専門員まで | 1,620/月 |
Ⅱ:40件以上/1専門員 | 611単位/月 |
B.基本給付費(継続障害児支援利用援助)
サービスの利用更新サポートです。
- 児童宅への訪問による障害児または家族への面接等
- 障害児支援利用計画の変更についての、A①~④の手続きの実施
件数 | 報酬額 |
39件/1専門員まで | 1,318単位/月 |
40件以上/1専門員 | 659単位/月 |
シンプルな収支計算法
理解を深めるためのシミュレートです。
このとおりに事業計画を組み立ててもうまくいくことはありませんので、その点ご留意ください。
実務上は、相談員(非資格者)等の配置によって、事務処理を円滑にすることも検討してください。
例)経費の算出
開業後6カ月間は、管理者兼相談支援専門員1人+会社役員による業務処理体制等によって、可能なかぎり経費を抑えた状態から始めることも考えられます。
- 月の処理件数:45件
- 管理者兼相談支援専門員 1名 28万円/月 ※法定福利費込
- 相談員(無資格) 80時間×1000円=8万円/月
- 家賃:10万円/月
- 水光熱費:1.5万円/月
- 通信費:1.5万円/月
- 車両・交通費等:5万円/月
- 地域単価:10円
最低経費:46~54万円/月 など
パターン①1人の専門員で、月に39件まで新規計画を行う場合
相談員(無資格)を雇用した事務処理体制を推奨します。
新Ⅰ 1,620×10円×39件 =631,800円/月
パターン②1人の専門員で、月に50件まで新規計画を行う場合
スタッフ負担はかなり大きくなり、離職リスクが高まるため、非推奨です。
新Ⅰ 1,620×10円×39件 + 新Ⅱ 639×10円×11件 = 702,090円/月
パターン③1人の専門員で、月に30件新規計画、10件更新を行う場合
スタッフ負担はかなり大きくなり、離職リスクが高まるため、非推奨です。
新Ⅰ 1,620×10円×30件 + 更Ⅱ 659×10円×10件 = 551,900円/月
パターン④常勤、非常勤の相談支援専門員で、月に30件新規、30件更新を行う場合
複数の相談支援専門員による運営です。
採用力がカギとなりますが、事業としてはこのような体制を目指したいです。
必要に応じて、無資格の相談員配置なども視野にいれるといいでしょう。
新Ⅰ 1,620×10円×30件 + 更新Ⅰ 1,318×10円×30件 = 881,400円/月
まとめ
直接的利益部門とはならずとも、貴社他事業との連携により、きめ細やかな利用計画円滑に施設の利用契約までつなぐことができる、という点が相談支援所を開設する利点です。
部屋としても、通常のハコモノ事業ほどの設備は不要であるため、事業としては比較的低リスクに始められる側面があることもメリットとして挙げられます。
1専門員39件での運営体制だと、制度設計上、採算としてはトントンか少しプラスで着地するくらいの見込みです。
それ以上超過して案件を受けることもできますが、スタッフの負担と採算性の面で、やや離職のリスクが高まるため、お薦めはできません。
39件/月をこえる契約者数になる見込みがあるならば、専門員2名(常勤+非常勤)体制以上にする、無資格の相談員を配置する、などによって、サービスの質と売上を高めていくように事業を設計することが望ましいです。
相談支援のまとめはこちらの記事をご参考ください。
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