保育等訪問支援の事業概要です。
事業の説明
- 記事の対象:児童発達支援、放課後等デイサービス事業者様で、保育所等訪問支援の仕組み導入を検討している方
- 記事の目的:保育所等訪問支援の許可基準、収支、運営ルールの概要を抑える
保育所訪問支援とは
保育所や幼稚園、認定こども園、学校などを訪問して、障がいのない子どもとの集団生活に適応させるための専門的な支援を行います。
保護者からの依頼に基づいて、施設を訪問してサービスを提供します。
訪問頻度は2週間に1回程度の訪問、1人あたりの支援時間については1回2~4時間程度が想定されています(厚労省ガイドライン)。
・主な条文
児童福祉法 第6 条の2 の2 第5 項
この法律で、保育所等訪問支援とは、保育所その他の児童が集団生活を営む施設として厚生労働省令
で定めるものに通う障害児につき、当該施設を訪問し、当該施設における障害児以外の児童との集団生
活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与することをいう。
利用対象者
児童発達支援や放課後等デイサービスの利用の有無に関わらず、利用することができます。
主な利用対象者は以下のとおりです。
- 保育所等の施設に通い
- 集団での生活や適応に専門的支援が必要と認められた児童
所定の手続きを踏んだのち、受給者証を発行して利用を開始します。
主な条文
児童福祉法
第4 条第2 項 この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に
障害のある児童(発達障害者支援法(平成16 年法律第167 号)第2 条第2 項に規定する発達
障害児を含む。)又は治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日
常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17 年法律第123 号)第4 条第1 項
の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度である児童をいう。
1日の流れ(例)
児童発達支援事業との多機能型のケース。1日あたり4人支援(合計総利用実績8回程度)。
1人あたり2回(2週間に1回。厚生労働省ガイドライン参考)の支援ペースに基づきます。
実際に開業を検討する際は、貴事業所のスタッフ配置、1日の流れ等を加味して適正に事業が回るようスケジュールを作成してください。
時間 | 利用者 | 訪問支援員 | 訪問支援員 | 管理者・児発管 |
A | B | C・D | ||
10:00 | 児童A・児童B | 児童Aへの 訪問支援 |
児童Bへの 訪問支援 |
児童発達支援事業との兼務
連絡調整、個別支援計画書の作成など |
10:30 | ||||
11:00 | ||||
11:30 | ||||
12:00 | ||||
12:30 | 休憩 | |||
13:00 | 児童C・児童D | 児童C・Dへの 訪問支援 ※同一場所7%減算適用 |
児童発達支援事業への配置 利用者の支援 等 |
|
13:30 | ||||
14:00 | ||||
14:30 | ||||
15:00 | ||||
15:30 | サービス提供終了 | 報告書の作成 等 | ||
16:00 | ||||
16:30 | ||||
17:00 | ||||
17:30 | ||||
18:00 | ||||
18:30 | ||||
19:00 | ||||
終業 |
シフト表(例)
1人あたり2時間の支援を想定。スタッフ欄に記載されている数字は、実働時間を指します。
毎日保育所等訪問支援の利用対象者がいる場合、療育に必要だと計画づけられた時間を満たすように訪問支援員を配置します。
本ケースは契約者数20名の場合での試算です。
1人あたり見込み利用回数月2回×20日稼働=40回/月
人件費の例
あくまで例示です。B,Cは他事業(児童発達、放デイなど)との兼務などを想定。
実際の人件費は、地域の求人広告などをもとに算定してください。
- 管理者兼児発管…役員報酬
- 訪問支援員B…1300円×40時間=52,000円/月
- 訪問支援員C…1300円×40時間=52,000円/月
計104,000円月
給付額の計算
1人あたり給付費額の計算 | 備考 | ||
基本給付費 | 988 | 1回提供ごとに算定可 | |
訪問支援員特別加算 | – | 679 | |
家庭連携加算(1回目) | – | 280 | 月あたりの算定 (家庭連携1時間以上想定) |
家庭連携加算(2回目) | – | 280 | |
初回加算 | – | 200 | |
利用者負担上限額管理 | – | 150 | |
処遇改善加算 | 1.079 | 請求額に対して算定 | |
月給付費 | 1,066 | 2,781 | 1人あたり |
地域単価 | 10 | 10円~11.24円 | |
総請求金額/月 | 10,661 | 27,806 | 1回利用+月加算の合計 |
月ごとの売上試算例
事業として採算を合わせていくためには、少なくとも7名~9名は受けられるように支援する必要があります。
貴事業所の運営実態による点をご留意ください、
前提は以下のとおりです。
- (1人2回×(基本給付費988+訪問支援員特別加算679)+家庭連携加算280×2)×10×1.079=48,058円/月
- 同一日複数利用の場合の7%減算は、便宜上除外するものとする
- 給付金は本来2ヶ月遅れの入金となるが、便宜上同一月にて算定するものとする
- 児童発達支援事業との多機能型による人件費の抑制
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||
収入見込み | 契約者数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||||||
月平均利用額 (1人当たり) |
48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | |||||||
給付費報酬額 | 48,058 | 96,116 | 144,174 | 192,232 | 240,290 | 288,348 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 合計 | ||||||||
収入見込み | 契約者数 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |||||||
月平均利用額 (1人当たり) |
48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | 48,058 | 576,696 | |||||||
給付費報酬額 | 240,290 | 288,348 | 336,406 | 384,464 | 432,522 | 480,580 | 3,748,524 |
許可基準
法人要件
- 株式会社
- 合同会社
- 一般社団法人
- 特定非営利活動法法人
- 社会福祉法人 等
※法人定款には「児童福祉法に基づく保育所等訪問支援」等と記載すること。
人員基準および設備基準
人員基準 | 訪問支援員 | 訪問支援を行うために必要な数 |
児童発達支援管理責任者 | 1人以上(専ら事業の職務に従事する者1名以上)
※管理者もしくは訪問支援員どちらかだけなら兼務可(厚生労働省障害福祉課確認) |
|
設備基準 | 管理者 | 原則として、専ら当該事業の管理業務に従事する者 |
専用の区画 | ・専用の事務室が望ましい ・利用申し込みの受け付け、相談スペース等の確保 |
【訪問支援員の要件】
児童指導員、保育士、理学療法士、作業療法士、心理担当職員等など。
対象となる児童の支援に必要な時間が確保されていれば、要件を満たします。
「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成24 年3
月30 日障発0330 第12 号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)
障害児支援に関する知識及び相当の経験を有する児童指導員、保育士、理学療法士、作業療法士又
は心理担当職員等であって、集団生活への適応のため専門的な支援の技術を有する者
【児童発達支援および放課後等デイサービスとの多機能型の場合の人員基準】※重要
- 管理者、児発管ともに、児童発達支援管理者等と兼務可(平24年報酬改定QA.101)
- 訪問支援員最低1名以上配置(常勤・専従でなくても良い)
報酬体制について
・給付費保育所等訪問支援給付費:988単位/日
※最低提供時間なし。個別支援計画に基づく支援を実施すること。
主な加算
・訪問支援員特別加算:679単位/回
訪問支援員について、以下の条件を満たすことで算定できます。
- 資格者※として配置された日以後、障害児に対する直接支援の業務、相談支援の業務又はこれに準ずる業務に5 年以上従事した者
- 障害児に対する直接支援の業務、相談支援の業務又はこれ に準ずる業務に 10 年以上従事した者
※資格者 ⇒ 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保育士、児童指導員、児童発達支援管理責任者、サービス管理責任者若しくは心理指導担当職員
※看護師追加(平成30年度より)
・初回加算(平成30年度より):200単位/月
児童発達支援管理責任者が、初回または初回の属する月に保育所等の訪問先との事前調整やアセスメントに同行した場合に加算する
・家庭連携加算(平成30年度より):187 or 280単位/月 ※月2回まで算定可(1時間以上、未満)
障害児の居宅を訪問し、障害児および家族に対する相談援助等の支援を行った場合に、月2回を限度として算定する。
・利用者負担上限額管理加算:150単位/月
事業所が利用者負担合計額の管理を行った場合
・処遇改善加算Ⅰ :月あたり総請求単位の7.9%
キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲおよび職場環境等要件の全てを満たすこと。
詳しくは下記の記事をご参考ください。
事業特有の減算
申請書類
事業許可を取得するために作成する書類の一例です。
項目1 | 項目2 |
申請書 | 苦情解決の概要 |
申請書別紙 | 組織体制図 |
付表(多機能型の場合) | 従業員勤務形態一覧表 |
定款 & 法人登記簿謄本 | 収支予算書、決算書、融資可能証明書 等 |
賃貸借契約書 or 建物登記簿謄本 | 児福法21条5-12-2各号に該当しない旨の誓約書 |
建物の平面図 | 役員等名簿 |
管理者経歴書 | 加算体制等に係る届出書 |
児発管経歴書 | 加算一覧表 |
実務経験証明書 | 事業開始届 |
資格証 | 申請調書 |
研修修了証 or 研修未受講申立書 | 検査済み証(新築、もしくは用途変更手続き時) |
履歴書、雇用契約書、秘密保持誓約書 | 防火対象物使用開始届 |
運営規程 | その他追記書類 |
実地指導上必要な書類
実地指導の際に要求される書類の一例です。
給付金の算定に直接関わる書類と、安全な事業運営に関わる書類があります。
項目1 | 項目2 |
指定申請書、変更届、報告書 | サービス提供記録 |
加算届、加算の算定に必要な書類 | 決算・事業報告関係書類 |
運営書類 | サービス利用計画・重要事項説明書 |
就業規則 | 利用者負担金等の請求書・領収書の控え |
雇用契約書 | 障害児通所給付費等明細書・請求書 |
従業員給与台帳 | サービス提供実績記録表 |
従業員名簿 | 苦情・事故・ヒヤリハット・身体拘束記録 |
従業員資格証 | 利用者の秘密保持に関する取り決め |
出勤簿もしくはタイムカード | 利用者の情報提供についての本人同意書 |
有給休暇申請書 | 代理受領額通理書 |
超過勤務命令、超過出勤記録簿 | 事業所パンフレット |
出張命令簿、出張記録簿 | 業務日報 |
職員会議録 | 非常災害対策計画 |
勤務表 | 消防計画 |
組織体制図 | 避難訓練記録 |
職員研修記録 | 給食献立表(必要な場合のみ) |
利用者名簿 | 保菌検査記録(必要な場合のみ) |
アセスメントシート・フェイスシート | 検食記録簿(必要な場合のみ) |
モニタリング実施記録 | 給食日誌(必要な場合のみ) |
サービス担当者会議録 | 契約内容報告書 |
障害児支援利用計画 | 事業所の自己点検票 |
個別支援計画 | 保護者アンケート結果 |
事業についての見解
事業の特徴
児童発達支援事業や放課後等デイサービスとの多機能型としてスタッフを兼務により配置することで、給付額の積み増しを図るなどの運営方法が考えられます。
保護者の依頼に基づいた支援を行うため、園や学校での把握しきれない過ごしかたが分かり、安心感に繋がります。
また対象児童の不適合要因に直接介入できるためきめ細やかな支援を実行できます。
その場合、サービス提供時間の重複等による人員欠如とならないようなスタッフ配置が求められます。
課題になりうる点
- 支援者単独での直接指導・間接指導によるため、ある程度の支援スキルが要求されること
- 同時に複数児童を支援する場合に7%の減算があること
- 制度自体の知名度の低いため、理解してもらう点から始めること
- 単独での事業展開を検討する場合は、相当数の支援が必要となりうること
本記事の注意点
弊所に依頼された場合は、本内容をもとに開業計画や行政交渉の段階から関わっていきます。
本記事をもとに独力開業・運営される場合は必ず行政との協議を通しながら開業準備を進めてください。
以下、注意点です。
- 運営基準に対する解釈は、自治体によって異なるケースがあります
- 必要書類、整備する書類および所定の記載方法について、自治体により異なるケースがあります
- 記事内容は30年度改正および過去の解釈通知等を参考に作成しています
参考文献
- 2017年度障害者総合支援法 事業者ハンドブック「指定基準編」
- 2017年度障害者総合支援法 事業者ハンドブック「報酬編」
- 保育所等訪問支援ガイドライン(平成28年度厚生労働省)
- 平成30年度障害福祉サービス費等の報酬算定構造
- 平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
- 指定申請に必要な書類一覧及び注意事項(愛知県庁障害福祉課)
- 指定障害福祉サービス事業者等指導・監査資料(愛知県健康福祉部健康福祉総務課監査指導室) 他
以上となります。追記・変更は適宜致します。
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