就労定着支援

【開業方法】就労定着支援の許可基準・報酬体系等のまとめ

就労定着支援事業の開業方法

本記事について

本記事の対象:就労定着行支援事業の立ち上げを検討している方

記事の目的:就労定着支援の概要を抑えること

 

就労定着支援とは

一般企業に就職した利用者が長く働き続けられるようにするためのフォローアップ事業です。

就労移行支援施設が上乗せで申請するケースが一般的ですが、生活介護、自立訓練、就労継続支援A型・B型事業所などでも指定をとることができます。

各事業の詳細は以下の記事をご参考ください。

 

就労定着支援の利用期間

利用期間は原則3年ですが、必要に応じて延長することもできます(事業者ハンドブック2019,指定基準編p.193)。

【就労定着支援】

生活介護、自立訓練、就労移行支援または就労継続支援(以下「就労移行支援等」という)を利用して、通常の事業所に新たに雇用された障害者の就労の継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活または社会生活を営むうえでの各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行う

 

就労定着支援の利用者

一般企業等に就職して6カ月以上経過した障がい者(知的、精神、身体等)です。

利用者のニーズとして挙げられるのは

  • 就労移行支援における就職後6カ月間のサポート期間が完了したものの、引き続きサポートをしてほしい
  • 就職できたは良いものの職場の人間関係がうまくいかない
  • 業務中にダメだと分かっていても居眠りをしてしまう
  • 今後のキャリアアップを描けない
  • 職場が障害に対する理解が低く、うまく仕事ができない

などで、これらの課題についてスタッフが面談等をとおしてフォローアップを行います。

 

基本的な機能は「就労定着支援の支援期間完了後のフォローアップ」にあり

「就職後6カ月間は既存事業でフォローアップをして、そののちは就労定着支援に切り替えて支援を提供する」

という方法が一般的なサービスの提供方法です。

就労定着支援への切り替え方は、たとえば以下のような手順が考えられます。

就職1カ月目 3カ月目 6カ月目 7カ月目~
【就労移行支援施設等によるフォロー】
就労支援員等による職場定着支援
(生活や仕事に関する悩み相談)
【利用計画策定】
1.就労定着支援の要否検討
2.サービス利用契約の策定
3.利用手続き 等
【就労定着支援によるフォロー】
(将来を見据えた生活相談、キャリアアップの相談など)

 

就労定着支援事業のスタッフ

法令上必ず必要な職員は以下のとおりです。

その他事業規模において事務員などの配置も検討します。

管理者

施設の管理者です。管理業務全般を行い、サービス管理責任者か世話人などと兼務することも多いです。

サービス管理責任者

利用者の支援に関する総責任者です。

1人ひとりの状態を踏まえた個別支援計画を作成、定期的な振り返り(モニタリング)を行い、スタッフを指導する位置づけにあります。

就労定着支援員

個別支援計画にもとづいて、利用者が職場に定着するために必要な仕事、生活相談などを行います。

 

就労定着支援事業所における1日の流れ

利用者の希望にあわせて職場を訪問し、必要な時間にあわせて相談援助を行います。

特に何時間以上滞在しなければいけない、という決まりもありません。

利用者との相談のうえ事業所内会議や(できれば)就職先企業などにも確認をとったうえで訪問時間帯を決めていきます。

定員数

20名定員と定める事業所が一般的です。

(施設としての契約者数ではなく、1日あたりの利用者数です)

利用者数に応じて、必要な就労定着支援員の数が変わってきます。

 

就労定着支援の売上計算

就労定着支援サービス費とも言い、就労定着率にもとづいた基本報酬(月額)×延べ利用回数によって算出できます。

例)シミュレート

  • 1人1,206単位(定着率10~30%)
  • 地域単価10円
  • 対象者10名(各利用者月1回利用)
  • 加算なし

1,206×10円×月総利用回数10=120,600円/月

その他の報酬区分は以下のとおりです。

就職後6カ月以上の定着率
定員/定着率 90% 80~90% 70~80% 50~70% 30~50% 10~30% 10%未満
20名以下 3,215 2,652 2,130 1,607 1,366 1,206 1,045

 

 

参考:売上構成のカギは「平均定着率」

母体となる就労移行支援事業所が開設1年未満の場合、

「定着支援開業の前月末日まで就労を継続している就職者の総数 ÷ 過去3年間の総就職者数」

で計算できます。

例 7月1日開業のケース

令和2年7月1日 就労定着支援事業オープン
令和2年6月30日 就労継続者数5人
平成30年7月~令和2年6月 総就職者20名

⇒ 5÷20=0.4 ⇒ 40% ⇒ 1,366単位/月

(1)新規指定の際の報酬区分について

就労定着支援については、就労定着率に応じて基本報酬を算定する仕組みとなり、就労定着率は、過去3年間に就労定着支援を受けた総利用者数のうち前年度末において就労が継続している者の数の割合から算出することとなる。ただし、新規指定の場合においては、一体的に運営する就労移行支援等における過去3年間の就職者の総数のうち指定を受ける前月末日において就労が継続している者の数の割合から算出することとなる(枚方市「就労定着支援について」)https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000018866.html

 

 

就労定着支援の開業スケジュール

申請部分だけ見れば3~4カ月で開業できますが、実際には準備期間がかかります。

就職先企業との連携、関係者への周知、スタッフの確保などを含めて、少なくとも半年以上は開業までにかかると見込んでおきましょう。

  1. 毎月1日付 開業
  2. 前月 審査期間&現地確認
  3. 前々月 指定申請 協議機関
  4. 3カ月前 官公庁事前協議
  5. 4か月以上前 開業準備

 

就労定着支援の許可基準

就労移行支援事業所を開業するためには以下のような指定基準を満たす必要があります。

法人基準

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 一般社団法人
  • 特定非営利活動法法人
  • 社会福祉法人 等

 

【補足】法人定款等に「障がい者総合支援法に基づく障害福祉サービス」等と記載すること

 

人員・設備の基準

20名定員の事業所の初期配置としては

  • 管理者・サービス管理責任者1名(就労移行支援施設と兼務)
  • 就労定着支援員 0.5名(就労移行支援施設と兼務)

などが考えられます。

設備については、支障がない限りは既存の就労移行支援施設等と兼用できます。

 

まとめると以下のようになります。

役職者 管理者 業務に支障のない限り、サービス管理責任者もしくはスタッフと兼務可能
サービス管理責任者 利用者60名以下1人以上
61~100名:1人追加(以下40名ごとに同様)
スタッフ 就労定着支援員 定員数÷20以上
※非常勤のパートなども可
設備 相談室 机1つ、イス4つ以上等。パーテーションの場合はプライバシーを確保すること
トイレ・手洗い場 手洗い場はトイレの外に設置されていること
事務室 事務作業をするために十分なスペースを確保すること

※設備は既存の就労移行支援施設などと兼用可

 

就労定着支援事業にかかる申請書類一覧

許可をとるために作成する書類の一例です。
項目1 項目2
申請書 苦情解決の概要
申請書別紙 組織体制図
付表 従業員勤務形態一覧表
定款 & 法人登記簿謄本 収支予算書、決算書、融資可能証明書 等
各物件の賃貸借契約書 or 建物登記簿謄本 障総法36条3項各号に該当しない旨の誓約書
各物件の建物の平面図 役員等名簿
管理者経歴書 加算体制等に係る届出書
サビ管経歴書 加算一覧表
実務経験証明書 事業開始届
資格証 申請調書
研修修了証 or 研修未受講申立書 検査済み証(新築、もしくは用途変更手続き時)
履歴書、雇用契約書、秘密保持誓約書 防火対象物使用開始届
就労定着支援の運営規程 消防計画
職員の配置状況(勤務形態一覧表) 協力医療(歯科機関)
利用予定者名簿 就労定着支援に係る必要書類一覧

 

就労定着支援事業の運営に必要な法定書類の例

実地指導の際に要求される書類の一例です。

給付金の算定に直接関係する書類と、安全な事業運営に関係する書類があります。

項目1 項目2
指定申請書、変更届、報告書 利用者負担金等の請求書・領収書の控え
加算届、加算の算定に必要な書類 就労定着支援 給付費等明細書・請求書
運営書類 サービス提供実績記録表
就業規則 苦情・事故・ヒヤリハット・身体拘束記録
雇用契約書 活動にかかる経費の分かる書類
従業員給与台帳 企業との連絡調整記録
従業員名簿 就労定着者数の記録票
従業員資格証 利用者の秘密保持に関する取り決め
出勤簿もしくはタイムカード 利用者の情報提供についての本人同意書
有給休暇申請書 代理受領額通理書
超過勤務命令、超過出勤記録簿 事業所パンフレット
出張命令簿、出張記録簿 業務日報
断続的な宿直または日直勤務許可申請書 非常災害対策計画
職員会議録 消防計画
勤務表 避難訓練記録
組織体制図 指定申請書、変更届、報告書
職員研修記録 加算届、加算の算定に必要な書類
利用者名簿 運営書類
アセスメントシート・フェイスシート
モニタリング実施記録
サービス担当者会議録
個別支援計画
サービス提供記録
決算・事業報告関係書類
利用契約書・重要事項説明書

 

就労定着支援にかかる加算・減算

減算事由に当てはまらないように注意しながら、各加算を組み合わせて運営することが利益の出る事業所をつくる最重要ポイントです。

  1. 専門性の高い資格者を配置する
  2. 6カ月以上、職場に定着できる利用者を増やす

事業所が、報酬の算定においても評価される傾向にあります。

 

サービス提供職員欠如減算 人員基準を満たさなかった場合に30%/50%減算
サービス管理責任者欠如減算 サービス管理責任者を配置できなかった場合に30%/50%減算
個別支援計画未作成減算 個別支援計画を適正に作成できていなかった場合に30%/50%減算
特別地域加算 中山間地域等に居住している者もしくは中山間地域等に所在する企業においてサービスが提供された場合 240単位/月
企業連携等調整特別加算 支援開始日から起算して1年以内の期間について加算 240単位/月
初期加算 生活介護等と一体的に運営される事業所において、生活介護等以外を利用して通常の事業所に雇用された者に対して新たに計画を作成し支援を行った場合 900単位/月(1回を限度)
就労定着実績体制加算 サービス利用修了者のうち、雇用された通常の事業所に3年6カ月以上6年6カ月未満の期間継続して就労している者の割合が7割以上の場合 300単位/月
職場適応援助者要請研修修了者配置体制加算 ジョブコーチ養成研修修了者を就労定着支援員として配置している場合
120単位/月
利用者負担上限額管理加算 利用者負担上限額管理を行った場合に150単位/月算定

 

 

就労定着支援事業のまとめ

就労定着支援事業所を開業するためには、複雑な許可・運営基準を抑えたうえで、関係機関と協議しながら根気強く取り組む必要があります。

採算を合わせていくためのポイントは「職場定着率」です。

報酬欲しさに無理やり仕事を続けさせるようなことがあってはならないですが、就職者本人の希望と適切な企業のマッチング、きめ細やかな職場定着のサポートを行うことになります。

以下の記事においても立ち上げで大変だった事例と解決策についてご紹介していますので、あわせてご参考いただければ幸いです。

 

参考資料

本記事は、以下の内容をもとに記述しています。

障害者総合支援法事業者ハンドブック(指定基準編)2019

厚生労働省「就労定着支援」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000185297.pdf#search=’%E5%B0%B1%E5%8A%B4%E5%AE%9A%E7%9D%80%E6%94%AF%E6%8F%B4+%E5%B0%B1%E5%8A%B4%E5%AE%9A%E7%9D%80%E7%8E%87′

 

 

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