就労移行支援

【開業方法】就労移行支援事業所の立ち上げ方法全集

就労移行支援事業の基礎

本記事について

本記事の対象:就労移行支援事業の立ち上げを検討している方

記事の目的:就労移行支援の概要を抑えること

 

就労移行支援とは

障害者のための職業訓練校のようなイメージです。

原則2年間の活動をとおして、利用者が一般企業で働くことができるよう様々なサポートを行います。

【就労移行支援】

就労を希望する障がい者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者につき、生産活動、職業体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その他適正に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他必要な支援を行う

 

参考:就労移行支援には2つの種類がある

皆さんがよく見かける形態が一般就職型で、資格の取得により就職を目指す認定型というものもあります。

※本稿では一般就職型を中心に解説いたします。

 

 

就労移行支援事業の具体例

実際の事業所様をいくつかピックアップしてみました。

リタリコワークス

「そのひとりの「働きたい」に応える」を掲げて、就職支援や生活支援、就労定着支援などにも取り組んでいます。

https://works.litalico.jp/

 

ウェルビー

「障害は“隠す”ものではなく“生かす”ものである」を掲げて、障害者の就職支援事業に取り組んでいます。

https://www.welbe.co.jp/

 

国立障害者リハビリテーションセンター

養成型といって、資格を取得することにより就職を目指す事業形態です。

http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/General/training3/

 

開業体験記(カタリスト株式会社/就労移行支援あるく様)

実際に開業した事業者様をインタビューしました。

【就労移行支援あるく様】開業時エピソード【カタリスト株式会社】就労移行支援事業所あるく 【住所】愛知県名古屋市中区栄2-2-17 名古屋情報センタービル2F 川名、大府、鈴鹿 他 【概...

 

 

就労移行支援の利用者

一般企業への就職を希望する18歳~(原則)65歳までの障がい者(知的、精神、身体等)です。

認定型については、資格取得を希望する障がい者が対象となります。

  1. 就職を希望する障害者で、一般企業への就職ができると見込まれる者
  2. あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許を取得することにより、就職を希望する者

 

補足:65歳以上の障がい者は継続利用できる

以下2つの条件をクリアできれば、65歳を過ぎても就労移行支援を継続的に利用することができます。

  1. 65歳に達する前5年間、障害福祉サービスを利用していたこと
  2. 65歳になる前日まで、就労移行支援事業を利用していたこと

 

 

就労移行支援事業のスタッフ

法令上必ず必要な職員は以下のとおりです。

管理者

施設の管理者です。管理業務全般を行い、サービス管理責任者か世話人などと兼務することも多いです。

サービス管理責任者

利用者の支援に関する総責任者です。

1人ひとりの状態を踏まえた個別支援計画を作成、定期的な振り返り(モニタリング)を行い、スタッフを指導する位置づけにあります。

職業指導員

個別支援計画にもとづいて、PCや作業訓練など各利用者に応じた支援を行います

生活支援員

個別支援計画にもとづいて、利用者の生活、健康相談などの支援を行います

就労支援員

個別支援計画にもとづいて、一般企業に就職するための面接同行、職場定着支援などを行います

 

 

就労移行支援事業所における1日の流れ

本人の生活リズムにあわせて少しずつ通所の習慣をつけながら少しずつ就職のためのスキルを身に着けていきます。

「1日何時間以上通所する」などの規定はありません。

利用者A 利用者B
8:30
9:00 来所
9:30 朝礼
10:00 パソコントレーニング
(エクセル・ワード等)
11:00
12:00 昼食 来所
13:00 面接練習 テキスト学習
13:45 フィードバック
14:00 帰宅 生活相談
14:45 帰宅
15:00

 

定員数

原則、1日20名まで来所することができます。

他事業と組み合わせる場合(多機能型)は、20名定員以下と設定することもできます。

 

就労移行支援の売上計算

就労移行支援サービス費ともいい、就職後6カ月間以上の職場定着率×月あたりの延べ利用回数によって売上が決まります。

例)シミュレート

  • 1人529単位/1日(開業当初,前年度実績ない場合)
  • 地域単価10円
  • 20名定員
  • 8割稼働
  • 月23日稼働(土日休み)
  • 加算なしのケース

529×10円地域×20名×8割稼働×23日=1,946,720円/月

報酬区分は以下のとおりです(一般的な形態である20名定員以下の場合)

就職後6カ月以上定着率
定員/定着率 5割以上 4~5割 3~4割 2~3割 1~2割 0~1割 0
20名以下 714 612 529 449 369 343 327

 

 

就労移行支援の開業スケジュール

申請部分だけ見れば3~4カ月で開業できますが、実際には準備期間がかかります。

事業コンセプト策定や、物件選定、エリアのリサーチ、資金調達、販促物作成などを含めて、少なくとも半年から1年程度は開業までにかかると見込んでおきましょう。

  1. 毎月1日付 開業
  2. 前月 審査期間&現地確認
  3. 前々月 指定申請 協議機関
  4. 3カ月前 官公庁事前協議
  5. 4か月以上前 開業準備

 

就労移行支援の許可基準

就労移行支援事業所を開業するためには以下のような指定基準を満たす必要があります。

法人基準

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 一般社団法人
  • 特定非営利活動法法人
  • 社会福祉法人 等

 

【補足】法人定款等に「障がい者総合支援法に基づく障害福祉サービス」等と記載すること

 

人員・設備の基準

20名定員の事業所の場合は

  • 管理者・サービス管理責任者1名
  • 職業指導員2名(社員2名)
  • 生活支援員1.3名(パート1.3名)
  • 就労支援員1.5名(社員1名+パート0.5名)

以上の配置が考えられます。

広さについては

  • 訓練室 40㎡以上
  • 多目的室 40㎡以上
  • トイレ
  • 手洗い場(トイレ外に設置された洗面所)
  • キッチン(必要に応じて)
  • 事務室
  • 相談室

が最低限必要になります(その他:必要に応じて静養室、学習室など)。

 

まとめると以下のようになります。

役職者 管理者 業務に支障のない限り、サービス管理責任者もしくはスタッフと兼務可能
サービス管理責任者 利用者60名以下1人以上
61~100名:1人追加(以下40名ごとに同様)
スタッフ 職業指導員および
生活支援員
合計:常勤換算で利用者数÷6以上
・職業指導員の数 1人以上
・生活支援員の数 1人以上
※どちらか1人以上は常勤職員であること
就労支援員 利用者数÷15以上
※1人以上は常勤職員であること
設備基準 訓練・作業質 定員数×2㎡以上
多目的室 定員数×2㎡以上
相談室 机1つ、イス4つ以上等。パーテーションの場合はプライバシーを確保すること
トイレ・手洗い場 手洗い場はトイレの外に設置されていること
事務室 事務作業をするために十分なスペースを確保すること

 

参考:スタッフの数は利用者の平均障害区分によって変わる

就労移行支援の運営に必要なスタッフ数の考え方は、やや複雑です。

利用者数に応じて、配置するべきスタッフの数は変わるためです。

例)職業指導員、生活支援員の場合

⇒ 定員数20÷6≒3.3名@1事業所あたり

職業指導員2名+生活支援員1.3名など

「1.3名ってどういう意味?」と思った方は、常勤換算という考え方を抑えてください

・障害福祉事業運営のために絶対抑えておきたい常勤換算とは?

 

就労移行支援事業にかかる申請書類一覧

許可をとるために作成する書類の一例です。
項目1 項目2
申請書 苦情解決の概要
申請書別紙 組織体制図
付表 従業員勤務形態一覧表
定款 & 法人登記簿謄本 収支予算書、決算書、融資可能証明書 等
各物件の賃貸借契約書 or 建物登記簿謄本 障総法36条3項各号に該当しない旨の誓約書
各物件の建物の平面図 役員等名簿
管理者経歴書 加算体制等に係る届出書
サビ管経歴書 加算一覧表
実務経験証明書 事業開始届
資格証 申請調書
研修修了証 or 研修未受講申立書 検査済み証(新築、もしくは用途変更手続き時)
履歴書、雇用契約書、秘密保持誓約書 防火対象物使用開始届
就労移行支援の運営規程 消防計画
職員の配置状況(勤務形態一覧表) 協力医療(歯科機関)
利用予定者名簿 就労移行支援に係る必要書類一覧

 

 

就労移行支援事業の運営に必要な法定書類の例

実地指導の際に要求される書類の一例です。給付金の算定に直接関わる書類と、安全な事業運営に関わる書類があります。

項目1 項目2
指定申請書、変更届、報告書 利用者負担金等の請求書・領収書の控え
加算届、加算の算定に必要な書類 就労移行支援 給付費等明細書・請求書
運営書類 サービス提供実績記録表
就業規則 苦情・事故・ヒヤリハット・身体拘束記録
雇用契約書 活動にかかる経費の分かる書類
従業員給与台帳 送迎記録表
従業員名簿 欠席受付表
従業員資格証 家庭訪問記録表
出勤簿もしくはタイムカード 事業所内相談記録表
有給休暇申請書 白杖通勤訓練にかかる記録票
超過勤務命令、超過出勤記録簿 利用者の秘密保持に関する取り決め
出張命令簿、出張記録簿 利用者の情報提供についての本人同意書
断続的な宿直または日直勤務許可申請書 代理受領額通理書
職員会議録 事業所パンフレット
勤務表 業務日報
組織体制図 非常災害対策計画
職員研修記録 消防計画
利用者名簿 避難訓練記録
アセスメントシート・フェイスシート 給食献立表(必要な場合のみ)
モニタリング実施記録 保菌検査記録(必要な場合のみ)
サービス担当者会議録 検食記録簿(必要な場合のみ)
個別支援計画 指定申請書、変更届、報告書
サービス提供記録 加算届、加算の算定に必要な書類
決算・事業報告関係書類 運営書類
利用契約書・重要事項説明書 施設外就労実施記録・職場実習等の記録 等

 

 

就労移行支援にかかる加算・減算

減算事由に当てはまらないように注意しながら、各加算を組み合わせて運営することが利益の出る事業所をつくる最重要ポイントです。

  1. 専門性の高い資格者を配置する
  2. 6カ月以上、職場に定着できる利用者を増やす

事業所が、報酬の算定においても評価される傾向にあります。

就労定着支援事業などと組み合わせることで、よりきめ細やかなサポートのもと収益体制を構築することもできます。

定員超過利用減算 1日あたり定員数の150%もしくは3カ月平均125%を超えた利用の場合に30%減算
サービス提供職員欠如減算 人員基準を満たさなかった場合に30%/50%減算
サービス管理責任者欠如減算 サービス管理責任者を配置できなかった場合に30%/50%減算
個別支援計画未作成減算 個別支援計画を適正に作成できていなかった場合に30%/50%減算
標準利用期間超過減算 平均利用期間が2年終了後6カ月以上経過している場合5%減算
(あん摩等の資格取得型は3年/5年)
身体拘束廃止未実施減算 身体拘束をしたにも関わらず記録がなかった場合、5単位/日減算
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算 視覚・聴覚・言語機能に重度の障害がある利用者が一定以上であって、意思疎通に関する専門職を配置いている場合に41単位/日加算
初期加算 利用開始から30日以内の期間について30単位/日加算
訪問支援特別加算 利用者が連続して5日以上利用しなかったときに、職員が居宅を訪問して相談支援を行った場合 月2回まで187単位/280単位 加算
利用者負担上限額管理加算 利用者負担上限額管理を行った場合に150単位/月算定
食事提供加算 収入額が一定以下の利用者に対して食事を提供した場合に30単位/日算定
精神障害者退院支援施設加算 精神病床におおむね1年以上入院していた患者に対し、就労移行支援を利用している間の夜間居住の場を提供した場合
・夜間職員配置 180単位/日
・宿直職員 115単位/日 加算
福祉専門職員配置等加算 資格者や常勤職員の配置割合によって加算
15単位 / 10単位 / 6単位

欠席時対応加算 利用者が急病等によって利用中止した場合に連絡調整、相談援助等を行うことで月4回まで94単位加算
医療連携体制加算 医療機関等との連携により、内容に応じて加算
Ⅰ:500単位/日  Ⅱ:250単位/日  
Ⅲ:500単位/日  Ⅳ:100単位/日 
就労支援関係研修修了加算 一般就労を促すために、所定の研修修了者等を就労支援員として配置した場合に6単位/日加算
就労準備支援体制加算 職場実習や企業内作業を行った場合
Ⅰ:41単位/日 Ⅱ:100単位/日
送迎加算 居宅等と事業所間の送迎を行った場合
Ⅰ:41単位/日  Ⅱ:100単位/日
障害福祉サービス体験利用支援加算 就労移行支援の利用者が障害福祉サービス事業の体験利用を行った場合に15日以内に限り算定
初日~5日以内:500単位/日 6日~15日以内:250単位
通勤訓練加算 外部から専門職員を招いて、白杖による通勤訓練を実施した場合に800単位/日加算
在宅時生活支援サービス加算 通所利用が困難で在宅支援がやむを得ないと市町村が認めた利用者に対し、所定の要件のもと支援を行った場合に300単位/日算定
社会生活支援特別加算 医療観察法にもとづく通院医療の利用者、刑務所出所者等にたいして地域で生活するたえに必要な相談援助や個別支援等を行った場合に480単位/日加算
福祉・介護職員処遇改善加算 キャリアパスを整備すること等によって算定

福祉・介護職員特定処遇改善加算

 

まとめ

就労移行支援事業所を開業するためには、複雑な許可・運営基準を抑えたうえで、関係機関と協議しながら根気強く取り組む必要があります。

採算を合わせるためには想定する利用者像と事業のコンセプト、報酬体系、人員体制を踏まえて慎重に決定していく必要があります。

特に想定する利用者像、得意とする就職サポート内容(工場、清掃、IT、その他オールマイティ等)によって事業体制は大きく異なります。

以下の記事においても立ち上げで大変だった事例と解決策についてご紹介していますので、あわせてご参考いただければ幸いです。

 

参考資料

本記事は、以下の内容をもとに記述しています。

障害者総合支援法事業者ハンドブック(指定基準編)2019

株式会社リタリコ(https://works.litalico.jp/

ウェルビー株式会社(https://www.welbe.co.jp/

国立障害者リハビリテーションセンター(http://www.rehab.go.jp/TrainingCenter/General/training3/

 

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