気になるところから読む
- はじめに「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
- 制度概要
- 算定要件
- 申請・報告方法
- 申請・交付スケジュール
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付率(案)
- 運用・導入手順(参考)
- よくあるご質問(厚生労働省事務連絡等)
- 「福祉・介護職員処遇改善支援事業」というのもありますが、なんですか
- 令和4年2月、3月の時点では、どの程度の賃金改善を行う必要がありますか
- 「○月分の賃金改善」とは、何月の勤務分を何月に支払うことになりますか
- 時給や日給の引き上げは、ベースアップと判定されますか
- ベースアップに関する要件は「福祉・介護職員」「その他の職員」それぞれ満たす必要がありますか
- 法定福利費増加分のうち、事業主負担分も支給実績になりますか
- 2/3以上をベースアップに使う → 残り1/3の用途は自由ですか
- 「毎月支払われる手当」とはなんですか
- 就業規則の改正が間に合わず、4月以降のベースアップを行った場合は
- 「その他の職員」はどこまでが対象か
- 2月、3月に実施したベースアップは、どのように処遇改善計画に記入したらいいですか
- 2月、3月の賃金改善がもし未報告だった場合は
- 交付額の算出基準となるのは、1ヶ月あたりの報酬総額ですか
- 4月以降に解説する事業所は、算定できませんか
- 現時点で分からないこと
- まとめ「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
はじめに「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
障害福祉職員に対しても、 賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度引き上げるための措置が始まります。
「1人あたり月額9,000円の賃金引き上げ」とされていますが、従来の処遇改善加算同様に1事業所あたりの報酬額×算定率で支給額が決まるため、実務上は従業員ごとなどに多少の差異が発生することも想定されます。
臨時特例交付金の趣旨(2022年2月9日加筆)
制度趣旨は、福祉・介護職員等の賃金のベースアップです。
- 原則として、令和4年2月~9月の賃金ベースアップを行うこと
- ただし、令和4年2月、3月のみ、ベースアップが間に合わない際の救済措置としての一時金 / 臨時手当等による賃金改善を認めること
※令和4年10月以降も、類似制度の継続予定があります。
当解説の対象者
- 障害福祉事業所の経営者様
- 障害福祉事業所の管理者様
- 処遇改善加算(給与関係)の運用ご担当者様
到達目標
- 福祉・介護処遇改善臨時特例交付金の運用ポイントについて理解する
- 誰に、いくらくらい配ればいいのか理解できるようになること
ご留意事項
あくまで2022年1月17日時点「検討中」の内容であることをご了承願います。
制度概要
交付金の対象となる期間
令和4年2月から9月の賃金引き上げ分(9月以降も、別途賃上げ効果が継続される取り組みは継続予定)
補助金額
対象となる事業所の職員(常勤換算)1人当たり結額平均9,000円の賃金引き上げに相当する額
計算方法: 各事業者の報酬額に交付率を 乗じた額を支給する
例)報酬月額200万円×1.9%=38,000円
対象となる職種
- 福祉・介護職員
- 事業所の判断で、「他の職員」の処遇改善に当処遇改善加算の収入を当てることができるよう柔軟な運用を求める
算定要件
- 処遇改善加算ⅠからⅢのいずれかを取得している事業所、かつ
- (重要)令和4年2月3月(令和3年度中)から、 実際に賃上げを行っている事業所
- 賃上げを実施した旨は都道府県に用紙にて提出(メールでの提出も可能)
- 賃上げ効果を継続できるよう、 補助額の2/3以上は福祉・介護職員のベースアップに使用することを条件とする。
- ベースアップは、 基本給または 毎月の手当等が想定される
- ベースアップでの対応は、4月以降
※要件を満たさない場合は補助金を返還しなければならない
【重要】令和4年2月~3月の運用について
算定条件として、2~3月に賃金改善を行う必要があります。
しかし、就業規則等の整備状況を踏まえて、当期間中は「一時金」として従業員の賃金改善を行うことになります。
- 就業規則改定(賃金規定等、賞与、超過勤務手当等への影響)に時間を要する可能性があるため、令和4年2月、3月分は一時金による支給を可能とする。
- 就業規則等の改正が間に合わない場合は、 令和4年3月中に、令和4年2月も 含めた賃金改善を行うことも可能
申請・報告方法
申請方法
各事業所において、都道府県に福祉介護職員、その他の職員の月額の賃金改善額を記載した計画書を提出すること。
月額の賃金改善総額のみで、個々人の賃金改善額の記載までは求められません。
(もちろん、記録だけは残しておいたほうが望ましいと考えます)
報告方法
各事業所において、 都道府県に 賃金改善期間経過後計画の実績報告を提出すること。
月額の賃金改善総額を記載して、個々人の賃金改善額の記載までは求めないものとされます。
申請・交付スケジュール
- 賃上げ開始月(2月末日または3月末日)に、賃金改善の旨の報告様式を、都道府県に提出する
- 計画期限:令和4年4月15日までに令和4年度処遇改善計画を都道府県に提出すること
- 6月から、毎月加算額が交付される
- 賃金改善期間後には、処遇改善実績報告書を提出すること
- 報告期限:令和5年1月31日までに処遇改善実績報告書を提出すること
期日の参考:https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/060301/2022011800101.html他
福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付率(案)
交付率は、現行の処遇改善加算同様に事業ごとに定められています。
福祉・介護職員数に応じて設定された、一律の交付率を障害福祉サービス等報酬に乗じて交付されます
備考
- 交付対象外の事業:就労定着支援、自立生活援助、地域相談支援、計画相談支援、障害児相談支援
- 10月以降の加算率は引き続き調整、検討予定
運用・導入手順(参考)
ここまでの内容を踏まえて、どういう手順で導入・運用すれば良いかをまとめてみました。
導入手順
- 令和4年4月以降 → 原則、毎月のベースアップ、または手当で賃金改善を行うこと。
- 令和4年2月、3月 → 臨時金等で賃金改善を行うこと
- 通常の処遇改善加算同様に、1事業所あたりの予算が決まっているため、誰(どの職種)に、いくら配るかを確定させて運用することが望ましい
- 手当の場合:臨時特例交付金での賃金改善であることがわかるように「一時金」「特例交付金」等、分かりやすい名称で支給する等
- ベースアップの場合:誰に、いくら賃金改善を行ったのか、給与明細等にも分かるように記載する等
- 見込補助額の2/3以上は、福祉・介護職員等≒従業員への交付。明記はされていませんが、処遇改善の趣旨的に、残り1/3は他の職員への支給等ができるのみで、おそらく会社の利益には、これまで同様できないと考えます。
運用手順
- いくらくらいの報酬額が見込まれるか、上記の交付率表から試算する(Ⅰヶ月の総報酬額×交付率)
- 令和4年2月、3月の支給案および令和4月~9月の支給方法について決定(おそらく9月以降も制度は継続)。
- 就業規則、賃金規定等を変更。
- 令和4年2~3月:対象者へ臨時手当交付
- 2月末日または3月末までに、賃金改善を行った旨について、都道府県にメールまたは用紙を提出する
- 実績報告などを見据えて「一時金 / 処遇改善臨時手当」など、分かりやすい名称で職員に報酬額を支給すること
- 処遇改善計画書を用いて、4月に事業所から都道府県に申請を行う
- 毎月のベースアップ実行(原則として、基本給または手当)
- 処遇改善実績報告書によって、賃金改善完了の報告を行う
よくあるご質問(厚生労働省事務連絡等)
できる限り分かりやすくするために、表現を若干修正しています。
「福祉・介護職員処遇改善支援事業」というのもありますが、なんですか
福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金を、そう表現する行政もあります(例:秋田県)
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/62577
令和4年2月、3月の時点では、どの程度の賃金改善を行う必要がありますか
令和4年2月、3月に見込まれる加算額の全額を、2月、3月の支給に充てる必要はありません。
ただし対象期間(2月~9月)で、交付金の合計を上回るように賃金改善を行う必要があります。
「○月分の賃金改善」とは、何月の勤務分を何月に支払うことになりますか
- ○月の労働に対する賃金引き上げ
- ○月に支払われる賃金を引き上げる
いずれの方法もとりえるもの、とされています。
ただし、現行の御社処遇改善加算の支給計画と異なる取扱いにならないよう適切に対応すること、とだけ定められています。
賃金改善の総額のうち、2/3以上は、基本給または毎月の手当による引き上げが、算定要件になっています。
したがって、令和4年2月、3月の賃金改善は一時金で対応した場合でも、4月以降は基本給改善、毎月の手当などでの還元が必要となります。
利用者が想定以上に増えることで、加算額が増加した場合の取扱いは
- 必要に応じて、再度就業規則等を改正する
- 基本給または毎月の手当をさらに増額する
などの対応が必要となります。
時給や日給の引き上げは、ベースアップと判定されますか
対象職員について、時給や日給の引き上げを行った場合、その分はベースアップの判定になります。
そもそも、ベースアップ要件とはなんですか
「補助額の2/3以上は、福祉・介護職員等のベースアップに使うこと」という、当加算の要件を指します。
- 福祉・介護職員等 → 支援員、サビ管、児発管etc…
- その他の職員 → 管理者、事務員、送迎員など
ベースアップに関する要件は「福祉・介護職員」「その他の職員」それぞれ満たす必要がありますか
お見込のとおり。両方の職種とも、当該ベースアップ要件に沿った賃金改善を行う必要があります。
私見:ただし、御社職員体制、評価体制にはよりますが、実務的には、ほぼ福祉・介護職員に対する支給で、予算を使い切るケースが大半とみております
法定福利費増加分のうち、事業主負担分も支給実績になりますか
ベースアップ要件(2/3)そのものにはなりません。
ただし、支給必須な、残り1/3以上の支給実績としては計上できます。
2/3以上をベースアップに使う → 残り1/3の用途は自由ですか
残り1/3の用途も、
賞与、手当、法定福利費増加分の事業主負担部分、などとして使い切る必要があります。
支給例:毎月の手当○万円、残額が発生した際は臨時手当として、○○員3名に支給する等
「毎月支払われる手当」とはなんですか
少なくとも、以下のような手当は対象外とされます。
・月ごとに支払われるかどうか、異なるような手当(私見:成果報酬制の手当等)
・当該労働者の個人的事情で支給される手当(通勤手当、扶養手当等)
私見:「臨時 / 特例手当」「臨時処遇改善手当」として支給するのが、事業者、職員ともに分かりやすくていいかと考えます。
就業規則の改正が間に合わず、4月以降のベースアップを行った場合は
臨時特例交付金の支給対象外となります。
「その他の職員」はどこまでが対象か
交付金の対象となる事業所における業務を行っている職員であれば、対象になりえます(2019年報酬改定Q&A問11)。
ただし、あくまで制度趣旨としては「福祉・介護職員の処遇改善」が目的であることに十分に留意してください。
私見:特別な理由がない限りは、現場スタッフに対する特例手当、等として支給することを推奨します。
2月、3月に実施したベースアップは、どのように処遇改善計画に記入したらいいですか
処遇改善計画書参照(対象期間で賃金改善額>交付金額となれば可とする、等)。
前年度の職員について、入れ替わりや職員数の増減があった場合の計算方法は
退職した職員 → 12ヶ月いなかったものとして、賃金総額から除外
途中入社した職員 → 12ヶ月いたものとして、賃金総額に追加
(2019年厚生労働省QAvol.4問2、2021年厚生労働省QAvol.4問14等)
2月、3月の賃金改善がもし未報告だった場合は
やむを得ない事情による場合だと認められた場合は、処遇改善計画の提出時にあわせて報告を行えばいいものとされます。
私見:ただし、認められない場合はリスクなので、期日までの提出を推奨します
交付額の算出基準となるのは、1ヶ月あたりの報酬総額ですか
はい。基本報酬、加算、処遇改善・特定加算を含んだ総額に対して、算定率を掛け合わせることで、交付金額を算出します。
例:1ヶ月の支給額200万円(基本報酬、加算、処遇等)×1.9%=3.8万円/月
4月以降に解説する事業所は、算定できませんか
ベースアップ要件や、処遇改善計画の提出、処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの算定などの要件を満たせば、算定できるものと考えます。
※2月、3月の賃金改善までは不要
参考;令和4年2月2日厚生労働省事務連絡「 福祉介護職員処遇改善銀時特例交付金に関するQ&A」
現時点で分からないこと
厚労省が繋がらず、QAでも確認のとれない事項と、その所見です。
△サビ管、児発管も、ベースアップの対象か?
「福祉・介護職員」の範囲として、対象になるものと考えます。ただし、そこまでのQAが出ていないため、4月以降、対象となることが確認でき次第、支給対象とするほうがいいかもしれません。
△支援員である法人代表者は?
特定処遇改善加算同様、エリアによって認める、認めないが分かれるかもしれません。
制度趣旨としては、「従業員の賃金改善」であるため、弊所としては職員への還元で完結することを推奨します。
△役員兼支援員は?
おそらく、従来の加算同様に「使用人兼役員」であれば、対象となる余地があると考えます。
詳細は税理士先生マターですが、役員でも雇用契約、勤務表での出勤確認等をもって要件を満たすこと、が原則です(税務領域につき、実地指導で確認される可能性は低いものの…)
△4月まで就業規則が間に合わなくても、妥当な方法で賃金改善だけ行っていれば大丈夫
か?
念のため、3月末までに就業規則を改定することが望ましいです。
現時点の様式案を見るかぎりでは、就業規則、賃金規定、キャリアパス表など「いつもの」様式変更をもって対応するような記載になっています
△法人全体でとりまとめて、特定の職員にだけ支給はできるか
おそらく可能だと考えます。
ただし、制度趣旨を踏まえて、できる限り各施設で配分することを推奨します。
なお、従来の加算どおり、全員に均等ではなく、特定の職員に割り振るような支給も可能ではあります。
まとめ「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
新たに始まる福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金についての現時点まとめです。
まずは交付率と、御社毎月の報酬月額をもとに、
- 1事業所あたりいくらの報酬額が見込まれるか?
- 誰に支給するか?
の検討から始めるといいでしょう。
以上、当解説が御社事業運営の参考になれば幸いです。
参考資料
厚生労働省「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」
無料でご利用いただけるメールマガジンで
主に事業運営に関するお役立ち情報や特別クーポン配信などに使用しております。
配信コンテンツは表向きには保管していないため、
早めに登録したほうが、より多くのお知らせを受け取ることができます
【再開】お問い合わせはこちら
業務のご相談や個別具体的な質疑応答等は
以下のページからお受けしております。
いつも参考になる情報ありがとうございます!
3点質問宜しいでしょうか。まだ要綱が出ていないので何とも…かと思いますが私見頂けたら幸いです。
・「賃上げ効果の継続に資するよう、補助額の2/3以上は福祉・介護職員等のベースアップ等の引上げに使用することを要件とする」
この読み取り方なのですが、当事業所の管理者は「補助額の2/3は福祉介護職員限定のベースアップ」と解釈しています。
私は「”対象となる職種を事業所判断で拡大した範囲で”補助額の2/3をベースアップ」と解釈しています。
・この交付金は2月支給の給与からとなるでしょうか。当事業所は翌月20日支給となっているので2月支給は1月分となります。
・交付率から算出される交付額は2022.1月分からのサービス算定額に乗じた額になるでしょうか。
こちらこそコメントいただき、ありがとうございます。
早く詳細な見解が欲しいところですよね。
補助額の2/3以上は「福祉・介護職員に支給」する、
別立てで「柔軟な運用として他の職員にも支給可能」と記載されているため、
特定処遇改善加算のような配分ルールになるのでは?と見ております。
配分につきましても、あくまで私見ですが、
・「2月からの賃金引き上げ」と記載されているため
・2月から基本給(手当)をアップさせて勤務を行い
・3月に実際の給与を支給する(2月分)
と解釈しております。
ただ、このあたりは様式が出ない限り、今のところ弊所としては
やはり断定的なことが言えないというところですので、
お気遣いいただきありがとうございますm__m
お返事有り難うございます!
やはりまだまだわかりませんね。
直接賃上げ以外の「処遇、特定のように法定福利費を入れ込んでいいのか」も気になる所です。。
実績報告を行うことを考えると、おそらく処遇改善加算同様に、法定福利費まで対象になる余地はあるものと考えております!
こちらこそご確認いただき、ありがとうございますm__m
初めまして。
今年から障害福祉で訪問介護事業所を運営しております。
今回の特別交付金に関して質問よろしいでしょうか?
1人あたり9,000円程度のベースアップとの事ですが、弊社は現在常勤1名と非常勤10名のスタッフがいます。勤務時間や資格等を考慮すると常勤1名に2月〜毎月5万円程度の分配が見込まれます。
この金額は認められる範囲でしょうか?
返金もありえますか?
ご回答よろしくお願いいたします。
はい!あくまで1人あたり平均値(見込値)ですので、いつもの処遇改善加算同様、対象者によって金額の多少があるのは問題ないものとされています
回答ありがとうございました。参考になりました!
隠れているルールや作成書類が多すぎて頭が痛い毎日です。
本当に隠れルールや対応作業など多すぎますよね
こういった論点多すぎにつき、うちも顧問の区画でやっと個別対応させていただいておりますので、また何かご縁がありましたらご検討くださいませm__m