短期入所

【開業方法】ショートステイ(短期入所)の許可基準、報酬体系等まとめ

  • 本記事の対象:ショートステイの立ち上げを検討している方
  • 記事の目的:ショートステイの概要を抑えること

保護者が介護者が病気や冠婚葬祭、旅行などによって、障がい者を一時的に宿泊させるときなどに活用します。

グループホームに住む前の「ならし(家庭を離れて暮らすことができそうかの確認)」として活用されることや、虐待に対する緊急一時保護的な役割を担うこともあります。

【短期入所】

居宅においてその介護を行う者の疫病その他の理由により、障がい者支援施設、児童福祉施設等への短期間の入所を必用とする障がい者等につき、当該施設に短期間の入所をさせて、入浴、排泄および食事の介護その他必要な支援を行う

 

ショートステイの許可基準・報酬体系等まとめ

ショートステイの主な事業形態

併設型事業所

本体事業の業務に支障がなく、かつ別室としてショートステイ用の部屋を確保する必要があります。

事業者ハンドブック上では「指定障害者支援施設等」と表記されます。

障がい者支援施設、児童福祉施設その他適切な支援を行うことのできる入所施設に併設され、本体事業と一体的に運営できる事業所のことを指します

 

・グループホームに併設することもできます

ハンドブック上では「指定宿泊型自立訓練事業所等」と記載されています。

適切な支援を行う施設として「指定宿泊型自立訓練事業所、指定共同生活援助事業所、日中サービス支援型指定共同生活援助、外部サービス利用型指定共同生活援助事業所」が想定されています。

 

空床(くうしょう)利用型事業所

利用者に使われていない、施設の全部または一部の居室においてショートステイを行う事業所です。

 

単独型事業所

指定障害者支援施設(指定宿泊型自立訓練事業所等を除く)以外の施設であって、利用者に利用されていない居室において、短期入所を行う事業所です。

 

ショートステイの利用者

障害支援区分1以上の障がい者・障がい児が利用できます。

  • 障害支援区分が区分1以上である障がい者
  • 障害児に必要とされる支援の度合いに応じて厚生労働大臣が定める区分における区分1以上に該当する障がい児

また、必ず介護者との同居は条件でなく、1人暮らしであっても市町村が必要と認められばショートステイを利用することができます(2019年事業者ハンドブックp.239)

 

ショートステイの運営に必要な職員

管理者

施設の管理者です。管理業務全般を行い、サービス管理責任者や世話人などと兼務することも多いです。

主に費用の管理、関係者や保護者の連絡、予約調整、利用者契約、シフト作成等を行います。

従業員

入居者の受け入れ対応、食事、入浴、排泄介助、連絡調整などの業務を行います。

各事業や受け入れ人数ごとに異なり、一般的には本体事業所の人員基準を踏まえて配置するスタッフの数が決まります。

単独型の場合は1~6名⇒1人、2~12人⇒2人…というように配置職員が増えていきます。

 

ショートステイにおける1日の流れ

パターン1 一定期間滞在するケース

日帰りだけでなく、一定の期間利用することもできます。

日中は生活介護、日中一時支援、就労継続支援などに通うケースが多いです。

入居者
9:00 入所受付
9:30 バイタルチェック
10:00 居室
12:00 昼食
13:00 レクリエーション活動
15:00 入浴
18:00 夕食
21:00 就寝
6:30 起床・洗面・バイタルチェック等
7:30 朝食
9:00 居室
12:00 昼食
15:00 入浴
17:00 退所

 

パターン2 1泊2日のケース

1泊2日など、スポットで利用するケースです。

入居者
17:00 入所受付
17:30 バイタルチェック
18:30 夕食
19:30 入浴
20:30 就寝準備
21:00 消灯
6:00 起床・洗面
6:30 バイタルチェック
7:00 朝食
9:00 退所

 

 

ショートステイ運用のポイント及びリスクマネジメント

たとえば以下のようなリスクが考えられます。

グループホームや入所施設のように、すでに居住系サービスを経営しており、ある程度ノウハウが蓄積されており、かつ既存の空き部屋などを活用した形態などで始めることが無難かもしれません。

逆に居住系サービスに取り組んだことのない事業者様は、居住系サービス経験者等を巻き込みながら立ち上げを行わないと、苦しい運営を強いられる可能性があります。

  • 日中に他の日中事業所に通った場合、単価が低く経営が困難になる
  • 稼働率が安定せず、人材確保が困難。支援の質も向上しにくい
  • 子どもが利用できるショートステイが少なく利用者の発達水準に合わず、トラブルに繋がる可能性がある
  • 休日や長期休暇など利用が偏り、職員確保が難しい 等
  • 利用者が固定されにくく、状況や障害によっては高い支援スキルを要求される

 

ショートステイの社会的意義

家族や本人の生活環境の変化に対する一時的な休息や、利用者の1人暮らし移行の予行練習などのために利用するケースがあります。

障害者本人とその家族の地域生活継続のためのサービス

  • 家族が地域から孤立しない生活を送ること

家族支援としてのサービス

  • 家族のレスパイト(一時的休息)
  • 冠婚葬祭等の家族行事
  • 近隣からの苦情に対する疲弊感への対応

本人と家族の適正なスペースづくりへの支援

  • 毎日の繰り返しからくる行き詰まり感への対応

特別な時期、特別な状況下での支援

  • 家庭内暴力、犯罪など反社会的行為
  • 家族の介護 等

 

ショートステイの売上シミュレート

以下のような条件を想定していました。

貴社で想定する事業規模、用途、コンセプト等によって収益構造は大きく変わります。

条件

  • グループホーム併設型シートステイ
  • 1施設 4床想定
  • 短期入所のみの利用 2名 計8回利用(土日等)
  • 就労継続支援など日中活動型事業所との兼用2名 計36回利用(平日夕方から等)
  • いずれも障害支援区分4の利用者

633単位×10単位×8回=50,640円/月

310単位×10単位×36回=111,600円/月

合計162,240円/月

 

報酬単価の詳細は以下のようになっています。

項目/障害支援区分 6 5 4 3 2 備考
福祉型短期入所サービス費Ⅰ 902 766 633 569 497 短期入所のみ利用
福祉型短期入所サービス費Ⅱ 588 515 310 234 168 日中活動系サービスを合わせて利用
福祉型強化短期入所サービス費1 1103 968 834 771 699 医療的ケアが必要でかつ短期入所のみ利用
福祉型強化短期入所サービス費Ⅱ 790 716 512 437 369 医療的ケアが必要でかつ日中活動系サービスを利用

 

ショートステイの開業スケジュール

申請部分だけ見れば3~4カ月で開業できますが、実際には準備期間がかかります。

事業コンセプト策定や、物件選定、エリアのリサーチ、資金調達、販促物作成などを含めて、少なくとも半年から1年程度は開業までにかかると見込んでおきましょう。

  1. 毎月1日付 開業
  2. 前月 審査期間&現地確認
  3. 前々月 指定申請 協議機関
  4. 3カ月前 官公庁事前協議
  5. 4か月以上前 開業準備

 

ショートステイの許可基準

ショートステイを開業するためには以下のようか指定基準を満たす必要があります。

法人基準

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 一般社団法人
  • 特定非営利活動法法人
  • 社会福祉法人 等

 

【補足】法人定款等に「障がい者総合支援法に基づく障害福祉サービス」と記載すること。

ショートステイの人員・設備基準の例

障害支援区分によって、配置すべき生活支援員の数が変わってきます。

 

スタッフ ①ショートステイとグループホーム等を併設する場合
両事業所の定員数を合算して要求されるスタッフ数②ショートステイのみ単独利用のケース
6名以下:1名以上
7~13名:2名以上 以下同じ
居室 障害者支援施設等の居室であって、利用者に利用されていない居室を用いること

【単独型の場合】
・1居室4名以下
・地階には設けられない
・寝台に代わる設備を備えること
・ブザーまたはこれに代わる設備を設けること

設備 本体事業所の設備を、支障ない場合は兼用できる。

【単独型の場合】
食堂、浴室、洗面所、便所を設けること

 

 

ショートステイの申請書類

許可をとるために作成する書類の一例です。
項目1 項目2
申請書 苦情解決の概要
申請書別紙 組織体制図
付表 従業員勤務形態一覧表
定款 & 法人登記簿謄本 収支予算書、決算書、融資可能証明書 等
各物件の賃貸借契約書 or 建物登記簿謄本 障総法36条3項各号に該当しない旨の誓約書
各物件の建物の平面図 役員等名簿
管理者経歴書 加算体制等に係る届出書
サビ管経歴書 加算一覧表
実務経験証明書 事業開始届
資格証 (申請調書)
研修修了証 or 研修未受講申立書 検査済み証
(新築、もしくは用途変更手続き時)
履歴書、雇用契約書、秘密保持誓約書 防火対象物使用開始届
運営規程 消防計画
利用予定者名簿 協力医療・歯科機関
短期入所に係る必要書類一覧

 

ショートステイ運営に必要な法定書類の例

実地指導の際に要求される書類の一例です。給付金の算定に直接関わる書類と、安全な事業運営に関わる書類があります。

項目1 項目2
指定申請書、変更届、報告書 利用者負担金等の請求書・領収書の控え
加算届、加算の算定に必要な書類 短期入所 給付費等明細書・請求書
運営書類 サービス提供実績記録表
就業規則 苦情・事故・ヒヤリハット・身体拘束記録
雇用契約書 服薬管理に関する手引書
従業員給与台帳 服薬に係る書類
従業員名簿 利用者預かり金管理規定
従業員資格証 利用者預かり金に関するマニュアル
出勤簿もしくはタイムカード 預かり金にかかる書類
有給休暇申請書 遺留金品関係書類
超過勤務命令、超過出勤記録簿 利用者の秘密保持に関する取り決め
出張命令簿、出張記録簿 利用者の情報提供についての本人同意書
断続的な宿直または日直勤務許可申請書 代理受領額通理書
職員会議録 事業所パンフレット
勤務表 業務日報
組織体制図 非常災害対策計画
職員研修記録 消防計画
利用者名簿 避難訓練記録

 

ショートステイにおける主な加算・減算

主な報酬単価は以下のとおりです。

これらを組み合わせて事業の採算を合わせていくことになります。

大規模減算 単独型20床以上においては10%の減算
身体拘束廃止未実施減算 身体拘束をしたにも関わらず記録がなかった場合、5単位/日減算
サービス提供職員欠如減算 人員基準を満たさなかった場合に30/50%減算
短期利用加算 利用開始から30日間において、1年に30日まで30単位加算
常勤看護職員等配置加算 看護職員が常勤加算1人以上配置されている場合、規模に応じて4~10単位加算
医療的ケア対応支援加算 医療的ケアを必用とする利用者を1名以上受け入れる場合に120単位/日加算
重度障害児・障害者対応支援加算 重度な障害の利用者を50%以上受け入れた場合に30単位/日加算
単独型加算 障害者支援施設等の入所施設等以外の事業所においてサービスを提供した場合に320単位/日加算
医療連携体制加算 医療機関等との連携により看護職員が事業者を訪問して利用者に対して看護行為などを行った場合に算定
栄養士配置加算 管理栄養士または栄養士を1名以上配置し、利用者の食事管理を適切に行っている場合
12/22/150単位/日
利用者負担上限額管理加算 利用者負担上限額管理を行った場合に150単位/月算定
食事提供加算 収入額が一定以下の利用者に対して食事を提供した場合に48単位/日算定
緊急短期入所受入加算 緊急利用者を受け入れた場合に、初日から原則7日を限度に180/270単位算定
定員超過特例加算 介護者の急病など緊急利用を、定員超過で受け入れを行った場合に50単位算定
特別重度支援加算 医療ニーズの高い利用者に対する計画的な医学的管理や療養上必要な措置を行った場合に120/388単位加算
送迎加算 居宅等と事業所との間の送迎を行った場合に加算
(同一敷地内の場合は70%加算)
福祉・介護職員処遇改善加算 キャリアパスを整備すること等によって算定
福祉・介護職員特定処遇改善加算

 

ショートステイの開業方法まとめ

短期入所施設を開業するためには、ある程度の期間において複雑な許可・運営基準を抑えたうえで、関係機関と協議しながら根気強く取り組む必要があります。

採算を合わせるためには想定する利用者像と事業のコンセプト、報酬体系、人員体制を踏まえて慎重に決定していく必要があります。

以下の記事においても立ち上げで大変だった事例と解決策についてご紹介していますので、あわせてご参考いただければ幸いです。

 

参考

障がい者総合支援法事業者ハンドブック2019(指定基準編・報酬編)

WAMネット「短期入所とは」https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/c078-p02-02-Shogai-13.html

独立行政法人国立重度知的障害者総合支援施設のぞみの園「地域で安心して暮らし続けるためのショートステイ」mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/cyousajigyou/sougoufukushi/dl/h24_seikabutsu-04c.pdf#search=’ショートステイ+併設型+障害’

東京都(ショートステイ,リスクマネジメント)

https://www.shougaifukushi.metro.tokyo.jp/Lib/Download.php?sqid=1951

 

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