気になるところから読む
はじめに
障害福祉サービスは「原則、前年度の平均利用者数」をもとに、翌1年(4月~翌3月)の人員配置が確定されます。
「毎月の実利用者数に合わせて人員配置を行う」の解釈だと思わぬ減算、加算の返金になるおそれがあるためご注意ください。
留意事項
- ここで算出する数値は、あくまで最低限の人員配置です。余裕を持った人員配置を推奨します
- エリアごとに行政の解釈、運用が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承願います
対象事業
以下のような事業者様を対象としています(弊所主な関与先中心)。
▶就労継続支援A型、B型、就労移行支援、共同生活援助、生活介護他
特に対象となる事業者
- 新年度の体制等届出(加算届出)の提出が必要な事業者様
- 実地指導など見据えてできる限り正確に数値を把握したい事業者様
- なるべく最低限の人員配置での運営をする事業者様
- 前年度において定員超過のある状態で運営していた事業者様
- 夜間支援従事者加算を算定しているグループホーム事業者様
これらの事業者様には、特に参考になると考えます。
難しいことを気にしたくない事業者様
「数値管理までする余裕がありません」という事業者様は、人員配置の制度や計算方法等を理解したうえで
「事業ごとに定められた定員数 ÷ 人員配置」名以上、
余裕をもったスタッフができれば、今回の論点を気にする必要はないかもしれません。
※ただし、行政書士の立場からは減算、加算返金などを防ぐためにも、きちんと人員配置を把握した事業運営を推奨します。
関連記事「常勤換算」
当記事の前提として「常勤換算」という論点が出てきます。
簡単にいえば、常勤職員、非常勤職員の実働時間の合計で、常勤職員何人分に該当するか?で、障害福祉事業の運営に不可欠な論点です。
例)常勤職員の1ヶ月あたり勤務時間が160時間とした場合
- 160時間の職業指導員 1名
- 160時間の生活支援員 1名
- 80時間の生活支援員 1名 → 80÷160=5名
常勤換算:2.5名
事業運営に必要な常勤換算の詳細な解説は、こちらからご確認いただけます。
▶https://syoshikawa.com/joukinnkannsan/
前提知識…事業ごとの人員配置 算出方法
前年度平均利用者数 ÷ 事業ごとの人員配置 で算出します。
各事業の計算方法を例示すると、以下のようになります。
20名定員の就労継続支援B型
前年度平均利用者数が16名だった場合、以下のようになります。
職業指導員、生活支援員
前年度平均利用者数16名 ÷ 配置区分7.5(:1) ≒ 常勤換算2.7名
20名定員の就労移行支援
前年度平均利用者数が18名だった場合。以下のようになります。
職業指導員、生活支援員
前年度平均利用者数18名 ÷ 6(:1) ≒ 常勤換算3.0名
就労支援員
前年度平均利用者数18名 ÷ 15(:1) ≒ 常勤換算1.2名
5名定員の共同生活援助
前年度平均利用者数が4.5名で、全入居者の障がい支援区分が3の場合、以下のようになります。
世話人
4.5 ÷ 4(:1)≒ 常勤換算1.3名
生活支援員
4.5 ÷ 9(:1)≒常勤換算0.6名
その他、事業ごとの許可基準は以下から確認できますので、ご参考になれば幸いです。
▶https://syoshikawa.com/shogaiseido/
平均利用者数の原則 … 前年度4月~翌3月(全事業共通)で算出
具体的な計算方法
平均利用者数 = 前年度の全利用者延べ日数 ÷ 開所日数
によって算出した前年度平均利用者数に基づいて、翌1年度の人員配置が確定されます。
小数点第2位以下は切り上げ(例:1.23→1.3)https://www.pref.ehime.jp/h20700/fukushi/jigyousyaoshirase/sya_youshiki/documents/jininkizyunkakunin.pdf
なお、開業して1年未満の事業者様や、年度途中に開設した事業者様の運用は、若干異なります。
行政の掲載する様式によっては、計算式が入っていることもあるため、とりあえず各月の開所日数と述べ利用者数さえ分かればなんとかなるかもしれません
以下、例外的な運用です。
開業後1ヶ月目~6ヶ月目
開業してから6ヶ月目までは、定員数×0.9によって、前年度平均利用者数を算出します。
例)2022年1月に開業した場合
1月~6月までは、定員数×0.9が定員数となります。
ケーススタディ
計算方法を例示すると以下のとおりです。
以降の論点においても、みなし前年度平均利用者数が、実際の平均利用者数に置き換わるだけで、計算方法自体は同様です。
20名定員の就労継続支援B型(人員配置7.5:1の場合)
定員数20名×補正率0.9=みなし前年度平均利用者18名
みなし前年度平均利用者18名÷7.5(:1)=2.4名
定員5名の共同生活援助(世話人配置4:1、入居者全員区分2以下の場合)
定員5名 × 補正率0.9 = みなし前年度平均利用者4.5名
みなし前年度平均利用者4.5名 ÷ 4(:1)≒1.2名 ※世話人配置
補足
7.5:1や4:1 … 各事業で定められる人員配置の割合です。基本報酬を確定させるための規定です。
開業後7ヶ月目~12ヶ月未満
直近6ヶ月の平均利用者数によって、翌1ヶ月を算出します。
例)2022年1月に開業した場合
- 2022年1月~6月までの平均利用者数で、7月のみなし前年度平均利用者数が確定
- 2022年2月~7月までの平均利用者数で、8月のみなし前年度平均利用者数が確定
- 以下、同様に計算
開業後12ヶ月以上経過
各月直近12ヶ月間における平均利用数によって、翌1ヶ月を算出
例)2022年1月に開業した場合
- 2022年1月~12月までの平均利用者数で、2023年1月のみなし前年度平均利用者数が確定
- 2022年2月~翌1月までの平均利用者数で、2023年2月のみなし前年度平均利用者数が確定
- 以下、同様
開業後 前年度(4月~翌3月)の実績得たのち
前年度12ヶ月の平均利用者数によって翌1年度を算出します(ここが原則)
例)2022年1月に開業した場合
- 2022年4月~2023年3月までの平均利用者数で、2023年度の前年度平均利用者数が確定
- 2023年4月~2024年3月までの平均利用者数で、2024年度の前年度平均利用者数が確定
- 以下、同様
その他の細かな運用
前年度平均利用者数の算出方法における、その他の計算は以下のとおりです。
従たる事業所がある場合
主たると従たる事業所の合計人数をもって、前年度平均利用者数を算出する必要があります。
定員を増加した場合
同一許可番号のGH、変更申請(定員増加)した就労事業所等は以下の方法で運用する必要があります。
- 定員増から6ヶ月未満 … 前年度平均利用者数+増加定員分×0.9
- 以下、基本的運用と同様です
定員を減少した場合
変更申請(定員減少)した事業所は以下の方法で運用する必要があります。
- 定員減から3ヶ月未満 … 前年度の平均利用者数どおりで確定される
- 定員減から3ヶ月以上6ヶ月未満 … 減少した月以降3ヶ月間における平均利用者数
- 前年度実績揃えば、原則どおり
各事業の細かな論点
就労継続支援A型、B型
- 施設外就労の利用者がいた場合は、別途施設外就労の利用者についても、別途算出すること
- 欠席時対応加算など、実際の利用のなかった日は計算から除外すること
- 施設外就労があった場合は、その分を除いて事業所内のみで人員配置を算定する
共同生活援助について
グループホームにおいて退去日は利用日数に含まない
就労定着支援、自立生活援助の計算方法
全利用者の延べ利用月数 ÷ 開所月数
よくあるご質問
何をもって記録を確認したらいいか
利用実績については、サービス提供実績記録票やご使用の請求ソフト、各月の利用予約表等、御社で行っている予約管理システム / 記録票等から確認するかと存じます。
計算用のフォーマットはないか?
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/provider/
たとえば名古屋市の場合、平均利用者数算定シートを掲載しています。
エリアによっては類似するシートが掲載されているかと存じますので、障害福祉課で確認してみましょう。
※制度自体は共通なので、様式もほぼ共通かと存じます。
まとめ
障害福祉サービス(者)においては、前年度平均利用者数の算出方法の理解が不可欠です。
事業ごとに定められる定員数に対して、余裕をもった人員配置を行えばおそらく大丈夫ですが、思わぬ減算、加算の返金などがないよう、理解しておくに超したことはありません。
当解説が御社事業運営の参考になれば幸いです。
参考資料
中央法規,2021年障がい者総合支援法事業者ハンドブック(報酬編)
ウェルネットなごや https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/provider/
愛媛県 人員基準の確認について https://www.pref.ehime.jp/h20700/fukushi/jigyousyaoshirase/sya_youshiki/documents/jininkizyunkakunin.pdf
愛媛県松山市 平均利用者数の算定(考え方)について
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