開業・運営ノウハウ

「常勤換算」の意味がどうしても分からない方が読む記事

はじめに

行政によって解釈が異なる可能性がありますので、判断に迷うときはハンドブックや御社エリアの行政手引き等を確認したり、行政に直接確認とることをお勧めいたします。

 

常勤換算とは

かなりざっくり言えば「社員何人分か」です。

計算対象となるのは、社員、パート、アルバイトなど、出勤している直接支援員の実働時間です。

基本的には1ヶ月あたりの勤務時間から算出するため、2.3人のような数値になることもあります。

(小数点第2位以下は、四捨五入ではなく切り捨てで算出します)

 

どういうときに使うのか

  • 事業ごとに必要な人員基準そのものを把握するため
  • 人員基準をクリアできるだけの配置実績だったかを把握するため

に使います。

 

特に後者は、毎月ごとにシフト作成時点と1ヶ月終了時点で確認することをお薦めします。

ただし、スタッフの配置や利用者数がほぼ固定であれば、変動がない限りは気にしなくてもいいかもしれません。

 

気になるところから読む

関連記事

人員基準を算出するためには「前年度平均利用者数」の論点も押さえる必要があります。

こちらの記事で解説していますので、ご参考になれば幸いです。

就労やGH、居宅介護など成人(者)の事業で特に重要となる考え方です。

https://syoshikawa.com/heikinriyousha/

 

誰が知っておくべきか

少なくとも事業責任者のポジションにある方(管理者やサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者など)や、社員は知っておいたほうが良いです。

特にシフト作成担当者は、社員でもパートでも、この論点を知っておくに超したことはありません。

 

把握するメリットは

実地指導でも役に立ちます

法令を理解して、毎月ごとに勤務形態一覧表を適切のうえで事業運営をしていることが分かれば、行政からの印象も良くなります。

実地指導も早く終わるかもしれませんので、適切に記録しておくに超したことはありません。

新規事業で役に立ちます

たとえば就労継続支援B型の事業者様がグループホームを開業する場合などに、許可取得のためにどれくらいの人員が必要か分かるため、意思決定が早くなるかもしれません。

加算の算定にも役立ちます

加算によっては、常勤換算何名以上必要、と定められているものもあります。

そういった加算算定の判断も自主的にできるようになります。

 

どうやって算出するのか

「対象職員1ヶ月の合計実働時間 ÷ 常勤の勤務すべき時間数」によって算出されます。

以下のようなケースでみてみましょう。

【1ヶ月の勤務実績】

  1. 常勤の職業指導員 168時間
  2. 非常勤の職業指導員 80時間
  3. 常勤の生活支援員 176時間
  4. 非常勤の生活支援員 90時間
  5. 常勤の勤務すべき時間 176時間
  6. 必達の人員基準 2.7人

【配置実績の計算】

(168 + 80 + 176 + 90) ÷ 176 = 2.92 ≒ 2.9人

職員としては4名在籍しているものの、社員換算すると2.9名の勤務、ということになります。

必達の人員基準2.7人を超えているので、人員配置クリアとなります。

ポイント

  • 常勤の勤務すべき時間数 を超えた残業時間、休日返上での勤務などはカウントできません
  • その他の論点は、よくある質問・ご相談をご確認ください
  • 事業ごとに必要な人員基準は異なるため、https://syoshikawa.com/shogaiseido/から該当事業をご確認ください。

 

よくある質問・相談

残業代や就業規則の運用など、労働基準法に関するテーマは社労士事務所の規制領域になるため、直接ご確認願います。

常勤の勤務すべき時間数とはなんですか

常勤職員として判定されるために必要な実働時間です。

特段の理由がなければ、1ヶ月160時間以上の勤務をもって常勤職員となります。

160時間を下回った設定もできますが、申請や実地指導のときなどには、就業規則によって根拠づけられているかどうかを確認されるかもしれないため、整備が必須です。

基本的な下限としては週32時間(1ヶ月128時間)までとされており、就業規則によって根拠づける必要があります。

年末年始やお盆など事業所の開所日数が通常よりも少ない場合でも、160時間の確保が必要ですか

160時間は、あくまで申請や届出時の考え方です。

実際にはご質問のように、毎月の開所日数などによって常勤の勤務すべき時間数は異なるため、常勤176時間の月もあれば、152時間の月もありえます。

複数の常勤職員がいる場合は、通常どおり出勤して、最も勤務時間の多かった職員の勤務時間数が、「常勤の勤務すべき時間数=割り算の分母」になります。

 

168時間の常勤職員と176時間の常勤職員がいた場合、前者は常勤にならない、ということですか?

シフトどおりに出勤した結果、そのような際が出ているなら、問題なく両方とも常勤職員と判定されます。欠勤などがあった結果、常勤として必要な勤務日数に足りなくなった場合は、非常勤と扱われる可能性がありますのでご注意ください。

 

常勤職員、非常勤職員の有給休暇、欠勤について

常勤職員

有給休暇は、常勤換算の計算に含むことができます。また、常勤としても有効に扱われます。

欠勤も、法制度上は常勤換算の計算に含められるものとされていますが、行政によっては「給与の支払が伴っていなければ不可」とすることもあります。

非常勤職員

有給休暇など、全ての論点において常勤換算の計算に含めることはできません。

※ 前者、常勤職員の場合であっても、 障害児通所支援のように 頭数として資格者が必要な場合は、

当該お休みをいただいた職員の代わりに別の職員が出勤する必要があります

常勤換算2.5人=毎日2.5人の出勤が必要になるのでしょうか?どう実現すれば良いですか?

基本的な理解としては。1ヶ月の合計時間において必要な勤務時間を満たしていれば大丈夫です。

(事業や加算によっては、細かく解釈が分かれています)

 

従業員10名以下の事業所で、就業規則がありませんが、どうしたらいいですか

障害福祉事業的には、常勤換算の算定根拠として、就業規則の整備が推奨されます。

少なくとも雇用契約書などに、1ヶ月の想定勤務時間や常勤・非常勤職員などの区分けを明記しておくことが望ましいです。

 

社員が常勤、パートが非常勤ということですか

障害福祉の制度としては、常勤の勤務すべき勤務時間以上に働いた職員が常勤と判定されます。

したがって、パート・アルバイトでも1ヶ月に勤務すべき時間に到達していれば、常勤と判定されます。

 

残業や、休日返上の出勤で、不足する勤務時間数を稼ぐことはできますか

常勤の勤務するべき時間を超えた実働分については、 常勤換算の計算に含めることができません。

 

月途中で入社した常勤社員はどういう扱いになりますか

扱いとしては常勤ですが、 勤務実績としては常勤換算で判定します。

例)60時間の出勤だった場合 = 60 ÷ 160 = 0.375 ≒ 0.3人

 

1ヶ月以上、事業所に出勤できていない常勤職員はどう処理しますか

上記の論点と同じく、常勤換算で判定します。

※いずれの場合も、事業ごとに必要な常勤要件を満たさなくなる恐れもありますのでご注意ください

 

出張や研修などは、どう処理したらいいですか

常勤職員については有効な勤務時間として評価されます。

非常勤職員の場合は、本来想定される業務ではないため不可となるおそれがあります。

 

週32時間以下と設定した場合はどうなりますか

32時間に到達した職員のみ、常勤と判定されます

 

週35時間と設定した場合、残業で40時間となった場合の賃金は、どうしたらいいですか

あくまで一般的見解ですが、法定内残業であれば、割増賃金を支払う必要はありません。ただし、勤務時間に応じた賃金は支払う必要があります。

したがって40時間を下回る勤務すべき時間数を設定する場合は、あらかじめ御社顧問社労士等に助言を受けて、リスクを検証することをお薦めします。

 

第4週までか1ヶ月合計、どちらで考えたらいいですか

行政に提出する申請、届出書類などは第4週までの数値をもって審査されます。実際の事業運営としては1ヶ月の合計時間数をもって計算します。

 

変形労働制での事業運営の場合は、申請・届出でも1ヶ月の合計時間で審査が行われます。

 

平均労働制について教えてください

一般的な週5日・1日8時間出勤ではない勤務形態で運用することもできます。

1ヶ月や1年単位で所定の労働時間内での運用ができるようになります。繁忙期や閑散期などある業態などで活用されることがあります。

 

常勤の管理者兼○○支援員、は常勤と認められますか

常勤と認められます。ただし管理者として必ず0.5人分は労働時間からとられますので、ほかのスタッフとの合計で適切に勤務時間をクリアする必要があります。

 

他事業所と兼務している常勤は、基準上の常勤職員と認められますか

行政や事業によって解釈が異なることもありますが、制度上は非常勤職員として扱われるケースが一般的な印象です。

ただし、所属人数として、運営規程や重要事項説明書などに記載すること自体は問題ありません。

 

居宅介護(障害福祉)と訪問介護(介護保険)の兼務職員は

両方の事業所において8時間、などとします。

 

休憩時間や、居宅介護の待機時間は勤務に含めますか

含めます。

 

産休、育休など、一時的に勤務していない職員の扱いはどうなりますか

事業所の在籍スタッフとしてカウントすることはできますが、人員配置からは除外して考えます。

育児・介護休業法の所定労働時間短縮措置の対象者の扱いは

1週間あたり30時間以上の勤務によって常勤職員と判定し、常勤換算上も、他職員とは区分けして、別途常勤換算1.0人としてカウントします

補足)

たとえば育児については、育児・介護休業法第23条第1項において

  • 3歳に満たない子を養育する者であること
  • 就業規則で、短時間勤務について始業終業時間を記載すること
  • 勤務表で、当特例を適用している従業者を明記すること

などが必要となります。

その他の論点や実務的な判断は、社労士事務所に確認することをお薦めいたします。

 

同等の資質を有する者の特例とはなんですか

産前産後休業や育児・介護休業、育児休業を取得した場合に、同等の資質を有する職員を複数名配置することで、当該常勤職員として判定できるようになります

 

同等の資質とは具体的になんですか

当該職種の要件を満たすために必要な勤続年数や研修、資格などの資質を満たすことを指します。

 

常勤換算のまとめ

障害福祉事業の運営に必須な常勤換算について、抑えていただきたいポイントをまとめました

基本的な論点としては、

 

1ヶ月の実働時間(残業除く) ÷ 最長の常勤の勤務時間

 

をすると勤務実績が算出されます。

この算出時間が人員基準をクリアできていれば問題ありません。

毎月ごとのシフト表を作成する段階から、超えるべき人員基準をクリアできているか、意識していきましょう。

当解説が、御社事業運営の参考になれば幸いです。

 

関連記事)

平均利用者数の算出方法について

https://syoshikawa.com/heikinriyousha/

障害福祉事業のまとめ

https://syoshikawa.com/shogaiseido/

 

参考資料)

○名古屋市 常勤・非常勤、専従・兼務の考え方

千葉県柏市 常勤・非常勤及び常勤換算方法について

兵庫県 障害福祉サービス事業の樹陰員・設備基準等(共通事項)

https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/syogaisisetsu/documents/sa-kigun1_1.pdf

厚生労働省 令和3年度障害福祉サービス報酬改定に関するQandA,vol1

https://www.mhlw.go.jp/content/000763133.pdf

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