開業・運営ノウハウ

送迎加算の算定、運用方法

はじめに「送迎加算」

主に通所系事業などで算定でき、結果的に利益が残ることもあるかもしれないため、積極的に導入したい加算です。

※ただし国としては、障がい者自身による自立を促すためにも、原則として自力通所を推奨している背景があるため、いずれテコ入れが入るかもしれません

解釈が異なると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があるため、押さえるべきポイントについてみていきましょう。

受講対象者

  • 障害福祉サービス事業所の事業責任者、管理者、社員など実務担当者様
  • 送迎業務のご担当者様
  • はじめて障害福祉事業所を開設した事業者様

解説の目標

  • 送迎加算運用の注意点を理解して、必要な運用・書類整備をできるようになること

理解するメリット

  • あとから不要な返金の手間の発生を回避できる可能性が高まる
  • 送迎加算の取りこぼしを回避できる

留意事項

  • 指定権者によって、詳細な運用が異なる可能性があります
  • あくまで、記事執筆時点での解釈・運用ですので、詳細は必ず指定権者の解釈、指示を受けてください

 

送迎加算の概要

対象事業

就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護、自立訓練、短期入所、放課後等デイサービス、児童発達支援等

要件の概要

居宅等と、事業所・施設間の送迎を行った場合に加算されます。

当解説では、より詳細な制度理解が必要となる就労系サービスを基軸として解説いたします。

報酬単価

就労系事業所(A型、B型、就労移行支援)

  • 送迎加算Ⅰ:21単位/回
  • 送迎加算Ⅱ:10単位/回

生活介護

  • 送迎加算Ⅰ:21単位/回
  • 送迎加算Ⅱ:10単位/回
  • 障害支援区分5~6の利用者が60%以上の場合はさらに片道28単位加算等

短期入所

  • 186単位/回

障がい児通所支援

  • 障がい児:54単位/回
  • 医療的ケア児のための手厚い体制は、さらに37単位加算
  • 重症心身障害児:37単位/回

※ いずれの事業も同一敷地内での送迎は、報酬額が70%となります。

報酬額のシミュレート

たとえば8割稼働の就労継続支援事業所B型の場合で計算すると、以下のようになります。

  • 対象者20名
  • 1人あたり往復2回
  • 月23日の来所
  • 送迎回数1人あたり46回
  • 報酬単価21単位(送迎加算Ⅰ)
  • 地域単価10円 の場合

8割稼働16名×送迎46回1人あたり×21単位×地域単価10円=154,560円/月(年間:1,854,720円)

 

送迎加算の具体的要件(報酬告示・関係告示の概要)

実務上、少なくとも押さえていただきたいポイントは以下のとおりです。

  • 事業所と居宅等の間を送迎した場合、片道あたりで報酬額を算定する
  • (利用者要件)原則として、当該月において1回の送迎につき、平均10人以上の利用者が利用していること
  • 利用定員20名未満の事業所においては、1回の送迎につき、定員の50%以上が利用していること
  • (回数要件)原則として当該月において週3回以上の送迎を実施していること
  • 上記回数要件、定員要件、両方を満たす場合はⅠ、片方を満たす場合はⅡを算定すること
  • (生活介護) 区分5もしくは区分6に該当する者又はこれに準ずるものが 利用者数の60%以上である場合
  • (生活介護)障害支援区分4以下であっても、行動関連項目が10点以上の利用者を送迎する場合

(障がい児通所支援) 送迎加算の適用に関する具体的な条件

  • 送迎を行っていることが、障がい児支援利用計画(障がい児相談支援事業所が作成)に記載されていること
  • 障害児支援利用計画が作成されていない場合は、学校、事業所、保護者の三者間で調整し、個別支援計画に記載することでも要件を満たすこと
  • 保護者が就労等により送迎できない場合であること
  • スクールバスのルート上に事業所が無いなどの理由から、送迎が実施できない場合
  • 利用児以外の児童の乗車時間が相当延長するなど、スクールバスでの送迎が適当でない場合
  • 就学奨励費(保護者に対する送迎費用等の補助)によって、学校と放デイ間における送迎手段を確保できない場合
  • その他市町村が必要と認める場合

(厚生労働省,平成24年QA問109)

 

詳細な運用方法(留意事項通知の概要)

居宅以外の場所への送迎について

居宅以外でも事業所の最寄り駅や集合場所への送迎も対象になります。

ただし、事前に利用者(や保護者等)と同意のうえで特定の場所を定めておく必要があります。

送迎に関する事前同意書や、重要事項説明書、個別支援計画書など、なんらかの書類であらかじめ送迎場所を定めておく必要があります。

外部への委託について

送迎は、外部の事業者に委託することもできます。

ただし、利用者へ直接公共交通機関の利用にかかる費用を給付する場合は対象となりません。

例)単にバスの運賃を渡した場合などにまで、送迎加算を算定することはできません

 

送迎加算の届出様式

障害福祉サービス(者の事業など)においては、 届出が必要となります。

届出様式は、以下のとおりです。

 

【重要】送迎回数・平均利用者数の確認・算出方法(就労、生活介護等)

日中活動系の事業所は、

  • 送迎の平均利用者数
  • 週あたりの送迎回数

によって、加算ⅠとⅡに分かれていきます。

基本的には1つの車両だけで、全利用者同時間帯で、毎日往復で送迎を行っていれば、比較的シンプルな運用になります。

逆に、日によって送迎の要否が異なったり、送迎時間帯にバラつきがあったりすると、送迎回数の管理について悩むことがあるかもしれません。

厚生労働省,平成24年QAや静岡市が掲載している様式をもとに、管理方法をまとめてみました。

指定権者によって解釈は異なる可能性がありますが、少しでも参考になれば幸いです。

 

送迎回数の考え方

1日の中で、居宅への迎え / 居宅への送り を行ったとしたら「2回送迎を行った」と判定します。

それを踏まえたうえで、週当りの送迎回数を算出すると、たとえば

第1週目:月と火に送迎往復で、計4回実施

第2週目:月、水、金に送迎往復、計6回実施

第3週目:月、水、送迎往復、金のみ片道で、計5回実施

第4週目:月~金、毎日往復で、計10回実施

の場合、

(4+6+5+10)= 1ヶ月合計25回送迎実施

月25回送迎÷4週間=1週間あたり約6回の送迎を行った

という判定になります。

この場合「週3回以上の送迎を行うこと」の要件を満たします。

平均利用回数の考え方

「片道1回あたり、何名の送迎をしたか?」で判定します。

1日の中で、迎え8名、送り6名だとしたら、(迎8名+送6名)=14名÷2=7名

「1回の送迎につき7名」という判定になります。

1日の中で、居宅への迎え / 居宅への送り を行ったとしたら「2回送迎を行った」と判定します。

それを踏まえたうえで、週当りの送迎回数を算出すると、たとえば

第1週目:往復で述べ50回の送迎実施

第2週目:往復で述べ48回の送迎実施

第3週目:往復で述べ55回の送迎実施

第4週目:往復で述べ52回の送迎実施実施

の場合、

(50+48+55+52)= 1ヶ月合計205回送迎実施

月205回÷4週÷週5日営業÷2(片道あたり)≒1回につき5.1名の送迎、という判定になります。

週5日営業の、10名定員事業所などであれば、「1回あたり定員50%以上の利用者を送迎すること」の要件を満たします。

 

片道1回あたりとは、1車両か合計人数か?

後者の解釈です。

  • 片道1回の送迎で、1車両に何名乗車するか?ではなく
  • 片道あたり、延べ何名送迎したか?

で、判定します(参考:厚生労働省,平成24年QA問40)

 

計算用の様式

これらを毎月手計算や、独自のExcelフォーマットを作って管理するのは大変かもしれません。

例えば静岡市は、以下のような計算フォーマットを提供しております

あくまで 自己責任である点恐縮ですが、送迎回数、送迎割合などの算出の参考になれば幸いです

1 送迎加算Ⅰ・Ⅱ算定確認表

https://www.city.shizuoka.lg.jp/000823206.pdf

 

整備することが望ましい書類

実地指導の観点から、弊所として備えていただきたい書類は以下ようなものが挙げられます。

  • 送迎記録(担当者、送迎対象者、送迎場所、時間等。任意の様式)
  • サービス提供実績記録表(送迎回数の適切な管理)
  • 送迎に関する事前同意書(居宅-事業所間以外の送迎を行う場合。または個別支援計画書に備考として記載するなど)
  • 業務委託契約書(外部事業者への委託の場合)
  • その他:加算の算定要件を把握して、ⅠやⅡなど誤りなく算定すること

 

よくあるご質問(厚生労働省QandA等)

いただいたご質問や厚生労働省QAの概要です。

徒歩での送迎も加算対象となるか

送迎に関する経費が生じていないため、算定できません。

病院や日中一時支援事業所への送迎、日中活動事業所からショートステイへの送迎も対象となるか

病院や事業所を利用するための移動は本来の趣旨とは異なるため、加算対象となりません。

ただし、短期入所事業所のような、利用者の宿泊場所への送迎は、居宅に準ずるものとして送迎加算の対象となります。(H27,問31)

 

送迎加算Ⅰで届出をしておいて、1つの要件しか満たさない場合などにおいて加算Ⅱでの請求はできるか

できます。

ただしこの場合は、届出によってできる限り速やかに加算の繰り下げを行う必要があります(平成27年,no13)

 

まとめ「送迎加算」

  • サービス提供実績記録票、送迎記録、送迎に関する事前同意書(または重説等)などを整備すること
  • 送迎は「週何回送迎したか?は片道1回として算出 / 1回あたり何名想定したか?は片道あたり平均何名送迎したか?で算出」すること
  • 送迎場所の指定があるときは、あらかじめ文章により事前同意を残すこと。

送迎加算は通所系事業所において必須であるものの、 押さえておきたい細かな論点もあるため解説いたしました。

御社事業運営の参考になれば幸いです。

参考資料

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