開業・運営ノウハウ

障害福祉事業者が押えるべき、業務管理体制の整備に関する届出

はじめに「業務管理体制届出について」

全ての障害福祉事業者は、法令遵守のための業務管理体制の整備が義務づけられています。

(意外と論点として存じない事業者様もおります)

減算、返金等には繋がりにくいものの、届出をしていないと実地指導で指導を受けることになるかもしれません。

法令上の義務でもあるため、適正な事業運営を実現するべく是非押えておきましょう。

受講対象者

  •  障害福祉サービス事業所の事業責任者、管理者、社員など実務担当者様
  • はじめて障害福祉事業所を開設した事業者様

解説の目標

  • 業務管理体制届出の注意点を理解して、必要な運用・書類整備をできるようになること
  • 理解するメリット
  • 法令遵守の意識を高めて、適切な事業運営ができるようになる
  • 法令遵守の体制が整っていることのアピールに繋がるため、実地指導も円滑に進行しやすくなる

留意事項

  • 指定権者によって、詳細な運用が異なる可能性があります
  • あくまで、記事執筆時点での解釈・運用ですので、詳細は必ず指定権者の解釈、指示を受けてください

制度の趣旨

指定取消しや不正請求が起こるような体制を未然に防ぐとともに、利用者保護と、事業所運営の適正化を図るための制度です。

事業数に応じて、行うべき業務の範囲が異なる点にご注意ください。

全事業者必須の事項

法令遵守責任者の選任(規則第2号)。

資格要件はありませんが 少なくとも障害者総合支援法及び児童福祉法及び関係法令を理解した法務担当者を選任することが想定されています。

法務部門などがない場合には 事業所内部の法令遵守を確保できるもの(一般的には管理者)を任命します。

行う作業:業務管理体制届出による、法令遵守責任者の設定

対象事業所が20以上の場合

法令遵守責任者の選任に加えて、法令遵守規定の整備が必要になります。

多機能型事業所や、居宅介護、重度訪問介護、同行援護等、1つの指定で複数事業を営んでいる場合、それら全てをカウントすることになる点にご注意ください。

例)施設A(放課後等デイサービス、児童発達支援)、施設B(居宅介護、重度訪問介護、同行援護)を行っている場合 → 計5事業

規定はどの程度のものを作成するのか?

詳細なチェックリストまでは必要ありませんが、 法令遵守を確保するための注意事項や標準的な業務手順を記載したものなど事業所の実態に即した任意の様式 を作成することになります。

指定権者によっては、20事業所未満でも、整備されているなら提出を求めてくる場合もあります。

(弊所顧問先には、参考様式を配布致します)

対象事業所が100以上ある場合

上記に加えて、 業務執行状況の監査を定期的に実施する必要が出てきます。

ここで言う監査とは、 行政によるものではなく

  • 事業所内部監査 または
  • 監査法人等による外部監査

いずれかの方法を指します。

また、

  • 社会福祉法人、特定非営利活動法人、株式会社等で、
  • 監事または監査役、監査委員会が行う監査に
  • 法令等遵守の状況を確保する内容が盛り込まれている

場合には、当該監査をもって、有効な監査と判定することもできます

 

障害福祉事業ごとに、根拠条文が異なる

以下のように、実施している事業ごとに、根拠条文が異なっております。

業務管理体制届出の作成にあたっては、以下の表等を参考にしてください。

条区分 対象となる事業者等 根拠となる条文
指定障害福祉サービス事業者
又は
指定障害者支援施設の設置者
障害者総合支援法第51条の2
指定一般相談支援事業者
又は
指定特定相談支援事業者
障害者総合支援法第51条の31
指定障害児通所支援事業者 児童福祉法第21条の5の26
指定障害児入所施設の設置者 児童福祉法第24条の19の2
指定障害児相談支援事業者 児童福祉法第24条の38

 

「条区分」という考え方

事業所の数え方は、事業によって若干異なります。

事業所の場合

同じ建物内に複数の事業所がある場合、 指定を受けている事業ごとに1つとして数えます。

例:1事業所で「居宅介護、重度訪問介護、行動援護」→3つの事業、としてカウントします。

この場合、

  • 障害者総合支援法第51条の2 → 3事業

となります。

 

さらに、一般相談支援(地域移行支援、地域定着支援)、特定相談支援(計画相談支援)、障がい児通所支援を行っていれば、

  • 障害者総合支援法第51条の31(一般相談支援、特定相談支援、計画相談支援)→3事業
  • 児童福祉法24条の38(障がい児相談支援)→1事業

計4事業 となります。

障害者支援施設の場合

施設内で複数の事業を運営していても「障害者支援施設が1つ」のみとしてカウントします。

従たる事業所等の場合

従たる事業所、出張所、基準該当事業所は、事業の数としてカウントしません。

事業所数に応じた、業務管理体制の整備の考え方

やや細かな論点ですが、法令遵守責任者のみで良いのか、法令遵守規定、監査体制の要否にも関わりうる論点ですので、できる限り理解しておくことをお薦めします。

  • 訪問系(居宅介護、重度訪問介護、行動援護) → 1事業所
  • 生活介護 → 5事業所
  • 就労移行支援 → 10事業所
  • 放課後等デイサービス → 5事業所

計21事業を運営している場合。

一見すると21事業につき、法令遵守規定の整備が必要に見受けられます。

しかしこの場合、

障害者総合支援法の障害福祉事業:18事業所(居宅、重度、行動、生活、移行)

児童福祉法の障がい児通所支援事業:5事業

となり、それぞれで20未満であるため、法令遵守責任者の配置のみで可、となります。

整備に関する届出の分類

  • 法人として初めて指定を受けた場合
  • 既に別の条区分の指定を受けている場合

新たに届出が必要となります。

逆に、条区分が追加されない限りは届出不要です。

【届出のいる例】

  • 障害者総合支援法にもとづく就労継続支援B型を開設のち、児童福祉法にもとづく放課後等デイサービスも開設する場合
  • 対象が20事業、100事業以上に増えた場合
  • 対象となる指定権利者が増えて、届出先が変更となった場合

 

【届出不要な例】

  • 児童福祉法に基づく放課後等デイサービスのみ増設していく場合等

 

【参考】業務管理体制届出の提出先

事業所の所在地によって、届出の提出先は異なってきます。

  • 条区分ごとの事業所が、全て名古屋市内にある → 名古屋市
  • 名古屋市にも、小牧市にも事業所がある → 愛知県
  • 岐阜県岐阜市にも、事業所がある → 厚生労働省

 

業務管理体制届出、法令遵守規定のサンプル

業務管理体制届出は、このような書類になります。

法令遵守規定は、このような書類になります。

業務管理体制整備確認検査

一般的には、実地指導の際に業務管理体制の確認も行います。

概ね3年に1回実施すること、とされていますが、各指導監査課の方針によっても実務上の運用は異なることがあります。

指導を受けた内容について、事業者様からの回答がない、改善の見込がない、などの場合には立ち入り検査を行われる可能性もあります。

指導を受けた項目については、できる限りすみやかに対応しましょう。

よくあるご質問(厚生労働省事務連絡等)

できる限り分かりやすくするために、一部質問の追記、QA表現を若干修正、一部割愛しています。

全文の確認は、後述するurlからも確認できます。

そんな届出があることを聞いたことがありませんでした

各エリアによりますが、

  • 指定申請時に同時に提出
  • して完了後に事業所に、所定の様式が送付される

などの運用がなされています。

業務管理体制届出を提出していない気がしますが、どうなりますか

「できるだけ速やかに提出」とされていますので、行政に報告のち提出することになります。

返金や減算もなく、実務的には、始末書 / 顛末書の提出等を求められたこともございませんのでご安心ください。

障害福祉事業、障がい児通所支援事業。それぞれの事業を運営している場合は

それぞれについて、業務管理体制届出の提出が必要です

児童福祉法による入所施設、通所支援、相談支援を行う法人は、それぞれ3通届出が必要か

そのとおりです。

指定権者が異なり、地域が複数に分かれる場合の処理は

【パターン1】

就労継続支援B型を、愛知県から指定受けている場合 → 愛知県

特定相談支援(市区町村指定の事業)を、小牧市から受けている場合 → 小牧市

に、それぞれ届出を提出することになります。

【パターン2】

もし、特定相談支援が「岐阜市(県外)」から指定を受けている場合は、国が届出先となります。

【パターン3】

特定相談支援を名古屋市で開設 → 名古屋市へ届出

放課後等デイサービスを愛知県内複数の市町村で運営している場合 → 愛知県

へ提出することになります。

事業所は、どう数えたらいいですか

法人全体ではなく、該当する事業所数をカウントします。

多機能型事業所の場合は、2事業、として数えることになるため、ご注意ください。

「障害者支援施設」として、施設入所支援、生活介護、自立訓練を行う場合等は

指定件数は1件となるため、事業所数も1カ所、として判定します。

「出張所」を県外に開設している場合は、国に提出しますか

出張後が、事業所としての指定を受けていない場合は、事業所等、として判定しないため、あくまで指定権者への届出のみとなります。

法令遵守責任者は、届出ごとに異なる者を選定できますか

できます。むしろ、同一人物で統一する場合でも、障害福祉事業(就労、グルホ、居宅介護等)、児童福祉事業(児発、放課後等デイサービス等)それぞれを運営していれば、それぞれで届出を行う必要があります。

 

まとめ「業務管理体制の整備について」

  • 多機能型事業所、居宅介護系事業所
  • 根拠法の異なる様々な事業を運営している法人

については、事業数の考え方について、特に注意が必要です。

実地指導で思わぬ指摘を受けないためにも、当解説を参考にして、適切な業務管理体制の整備ができれば幸いです。

 

参考資料

厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の業務管理体制の整備について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kanriseibi/index.html

 

仙台市「障害福祉サービス事業者等の業務管理体制の整備について」

http://www.city.sendai.jp/shogaishien-shido/jigyosha/fukushi/fukushi/shogai/joho/ijo.html

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