就労継続支援A型

就労継続支援A型 スコア表(基本報酬)の算定方法

はじめに「基本報酬の算定(評価点区分)方法」

令和3年報酬改定によって、就労継続支援A型の報酬算定は、やや複雑になりました。

かなりざっくりまとめると

  • 制度を定めているかどうか
  • 実際の該当者(取り組み事例)がいるかどうか

となります。

各評価項目について細かな運用ルールが定められておりますので、解説としてまとめました。

 

Ⅰ:平均労働時間の算出について

従来どおりの算出方法であるため、既存の事業者様には馴染みがあるかもしれません。

平均労働時間の長短によって、加点されます。

 

原則として、

  • 前年度の総労働時間÷延べ利用者数

によって算出します。

 

実地指導の観点からは、

  • 雇用契約を締結していた全利用者について雇用契約書やタイムカードなどの記録が備わっているか

が確認されます。

 

Ⅱ:生産活動の算出

  • 生産活動収入で、利用者の賃金を賄えているか?

によって加点されます。

評価対象となるのは前年度および前々年度の2年間です。

 

実地指導の観点からは

  • 前年度における生産活動収支、利用者への賃金支払総額が確認できる賃金台帳、就労支援事業活動計算書等の各種会計書類
  • 就労継続支援A型の会計年度を基準として、前年度および前々年度について、生産活動収入が、利用者に支払う給与以上であったかどうか
  • 新規指定の事業所における2年目の基本報酬は、原則として1年度目の実績に合わせてスコアを算定していること

が確認されます。

 

Ⅲ:多様な働き方

利用者の働き方について、前年度において就業規則等で多様な働き方を定めたうえで、1人以上取り組みを行うことで、加点されます。

 

実地指導の観点からは

  • 検定や資格受講の詳細が分かる免許、就業規則などは備わっているか
  • 実際に前年度において1名以上当該制度を利用した者がいるかどうか / 確認できる記録書類はあるか
  • なお、単なる趣味・教養的な資格や極めて初歩的だとみなされるような資格の取得ではないこと

が確認されます。

 

ただし、選択項目ごとにいくつかのポイントがあり、詳細は以下のとおりです。

 

ア)資格取得の助成

  • 就労に必要な知識・能力向上のための資格取得に係る費用の助成制度を定めているかどうか

 

イ)昇給・昇進規定

  • 職員の登用方法、登用試験、登用後の雇用条件について就業規則に定めているか
  • 以下、それぞれの制度について記載のある書類はあるか
  • A型事業所と雇用契約を締結した利用者の希望によって利用を1名以上登用し、当該職員の継続雇用期間が前年度6ヶ月以上かつ年度末まで継続できているかどうか

 

ウ)在宅勤務に関する規定

  • 在宅勤務制度について定めがあるかどうか
  • 在宅勤務制度にそって、在宅勤務を行った利用者が前年度1名以上いたかどうか/ 確認できる記録書類はあるか

 

エ)フレックス勤務制度

  • フレックス制度を定めているかどうか
  • フレックス制度には対象者の労働時間、精算期間、精算期間における総労働時間を定めること
  • フレックス制度の利用者が前年度において1名以上いるかどうか/ 確認できる記録書類はあるか

 

オ)短時間勤務制度

  • 短時間勤務制度を定めているかどうか、および前年度において1名上該当者がいるかどうか/ 確認できる記録書類はあるか

 

カ)時差出勤について

  • 始業時間、終業時間、休憩時間等を就業規則に定めていること
  • 時差出勤の利用者が前年度において1名以上いるかどうか
  • 確認のとれる記録書類はあるか

 

キ)有給休暇制度

  • 時間単位年休の取得または計画的付与については労使協定を結んでいること
  • 前年度において1名以上利用者がいるかどうか / 記録書類は整備されているか

 

ク)傷病休暇制度

  • 傷病休暇制度、療養中・療養後の短時間勤務制度、失効年休積立制度等を終業規則に定めているかどうか

 

Ⅳ:支援力向上のための取り組み

前年度において、就労継続支援A型の支援員(職員)の支援力向上のための取り組みを実施して、適切な記録残している場合などに加点されます。

 

選択項目にもよりますが、実地指導において確認される資料は以下のとおりです。

  • 研修計画(時期、目的、対象者、具体的内容を記載したもの)は備わっているか
  • 研修修了証、受講証明証などは備わっているか
  • 外部研修の開催案内、受講概要、受講者名簿など参加職員の確認をできる書類はあるか
  • 内部研修についてはカリキュラム、議事次第、参加者名簿等
  • 学会や学会誌の場合はセミナー開催案内、実施概要、資料等
  • 学会誌に掲載された研究論文、実践報告等
  • 展示会に出品したことの分かる展示会資料等
  • 地域企業や商工会議所と情報交換会を行ったことの分かる実施スケジュール、参加者名簿、関係資料一式等
  • 人事評価を行った際は、基準や手続きが明文化された就業規則
  • 当該人事評価制を周知したことの分かる会議録、お知らせなど
  • 当該人事評価制度に基づいて昇進・昇給したことの分かる書類
  • ピアサポートの研修修了証
  • ピアサポーターにかかる雇用契約書、出退勤記録、シフト表、組織体制図等

 

主な評価ポイントは以下のとおりです。

(ア)研修の有無

A型の職員に対して研修を実施した場合などに評価されます。

ア)外部研修

  • 職員に対し行う、研修計画に基づいたA型事業所以外が行う研修への参加
  • 職員の半数以上が参加したかどうか。ここでいう職員はサービス管理責任者、職業指導員、生活支援員を差し、管理者・事務員は含まないこと
  • 外部研修の主なテーマは障害者支援、就業支援、障害福祉に関するもの、賃金向上に関するものであること

イ)内部研修

  • 職員に対して行う、外部講師を事業所に招いて行う研修を指す
  • 概ね半日以上の時間設定がされていること

 

(イ)外部発表の有無

ア)研修、学会等、学会誌等

A型の支援員が、外部に取り組み事例の発表を行った場合などに加点されます。

  • 講演者として登壇して、他の事業所や企業に対して取り組み事例の発表を行うこと
  • 研修、学会等(一定規模以上)、学会誌への掲載などを行うこと
  • 学会誌への掲載は当該学会誌に掲載が行われていること

 

(ウ)先進的取り組みの有無

  • 先進的事業者の定義を把握しているか
  • スコア合計170点以上の事業所
  • 障害者雇用のための新たな職務の設定や、キャリアアップの取り組みを行い、相当程度以上の障害者雇用率を達成している企業
  • もにす認定をうけている企業

ア)視察の内容は以下を含んでいるか

  • 施設内見学
  • 事業概要の説明
  • 障害者が従事している生産活動、業務の見学
  • グループワークなどの各種支援プログラムの見学
  • 職員または先進的事業者を利用、雇用されている障害者との意見交換

イ)他事業所からの見学・視察の受入れについて

  • 雇用管理方法、訓練手法、高い収益を上げる生産活動の手法について、他事業所へ情報提供を行っていること
  • 視察や実習についてはあらかじめ障害者に同意を得てプライバシーの配慮を行うこと

ウ)実習の内容には以下を含んでいるか

  • 障害者が従事している生産活動、業務に体験的に従事すること
  • グループワーク等の各種支援プログラムの参加
  • 職員または先進的事業所を利用、雇用されている障害者との意見交換

 

(エ)販路拡大のための商談会等の参加

  • 販路拡大のためのビジネスマッチングを目的とした展示会への出展
  • 地域企業への情報交換機会を設定したうえでの事業内容の説明、情報交換
  • 新たな生産活動の導入、事業拡大を目的とした自治体や地域の商工会議所等が実施する企業間の情報交換会、商談会への参加

 

(オ)人事評価制度および全職員への周知

  • 人事評価制度を定めて、前年度において実行できているかどうか

 

(カ)ピアサポーターの配置

  • 障害者ピアサポート研修(基礎または実践)を受講し、研修修了証を整備できているかどうか
  • ピアサポーターとしての配置が認められる職種は、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員ほか、「利用者以外で」利用者とともに生産活動や就労に参加する者であること

 

(キ)第三者評価の実施及び結果の公表

  • 当該年度の前年度末日から起算して過去3年以内に受けた第三者評価を公表すること

 

(ク)国際標準化機構が定めた規格

  • またはその他これに準ずるものとして都道府県が認める規格に適合している旨の認証を受けている場合
  • ISO、JIS、JFS、日本農林規格、GAP、ASIAGAP、JGAP等

 

Ⅴ:地域連携活動

前年度において地域の企業や行政と事業活動を行い、取り組み結果を公表した際に

  • 地域企業や官公庁と商品開発、販売を行ったことの分かる契約書等
  • 当該取り組みの実績および連携先となる企業または地域住民からの評価コメントをまとめた資料を掲載したホームページ情報

の条件を満たせば、加点できます。

 

主な点検項目は以下のとおりです。

  • 企業や自治体と連携して付加価値の高い商品開発に取り組んでいるか
  • 地域連携活動は、生産活動収入の発生を目的としたもので、概ね3ヶ月以上継続的に活動しているものを対象とすること

公表の方法

  • インターネット等の方法により毎年4月中に公表を行うこと
  • 新年度4月に指定された事業所は当該年度、年度途中で指定を受けた事業所は初年度及び翌年度について公表は不要であること
  • インターネット以外の公表方法は市町村の情報誌掲載、A型事業所及び関係機関への掲示など方法によること
  • できる限り点字や読み仮名つきで作成することが望ましい

 

【令和3年度から】自己評価未公表減算

・スコアについては、wamネットもしくはホームページなどで公表を行わないと減算を適用させること

 

その他実務的なポイント(よくあるご質問)

多様な働き方について

就業規則その他これに準ずるもの → 何が想定されるか?利用者の雇用契約書は対象になるか?

労働契約書への記載のみでは、評価対象にならない。

私見:実務的な視点からは、従業員10名以下の事業所でも、就業規則によって、多様な働きかたに規定する各種制度を定めておくことを推奨します。

 

免許や資格取得の費用サポートを対外的に謳うことは、利益供与の禁止に当たらないのか

A型の利用を検討している利用者に対して、パンフレットなどで過剰に資格取得を金銭的に強調することは、利用者誘引行為になる可能性があるため、注意が必要です。

 

多様な働き方について、毎年度4月1日時点の就業規則等の整備状況及び前年度における活用実績で評価することになっているが、前年度における活用実績の根拠となる就業規則は、前年度の4月1日時点で整備されている必要があるのか

たとえば令和4年度の場合、

  • 令和4年4月1日の時点で就業規則が整備されていることで1点加点。
  • 活用実績は、当該活用実績の根拠となる就業規則などが、当該項目を活用した時点で整備されていることでさらに1点加点、となります。

必ずしも、前年度4月1日の時点での就業規則整備まで求められる訳ではありません。

 

事業所独自で定めている資格制度検定制度は評価の対象となるか

以下の2点を満たせば、評価対象になる可能性があります。

  1. 当該資格等を取得することによって、ほかの利用者よりも高い賃金額に昇給できるなど、明確な実績が定められている場合
  2. 行政が認める場合

 

任意の5項目から、3つ選択 → 5項目も対象がない場合はどうしたら良いか

該当する項目のみ選択して、1点または2点で評価すること。

※支援力向上についても、同様の運用です。

 

利用者が自力で事業所に通勤するための自動車運転免許取得に係る支援を行った場合も、対象になるか

対象になります。

 

支援力向上の取り組みについて

研修、学会等での発表における一定規模以上の参加者とは、どの程度の規模か

少なくとも30名を超える参加者のもと、発表が行われている必要があります

 

学会等の発表は、一般市民に対するセミナーや、大学の生徒に対する講義も含むか

あくまで、他の事業者や企業に対して障がい者就労に関する取り組みの促進を期待するものであるため、対象とはならない

 

職員の半数以上が研修に参加する → 職員の入退社によって、年度途中で職員数が変動する場合は、いつの時点の職員で判定するのか

研修計画段階の職員数で判断する。

ただし、退職することが明らかな職員については、職員数から除外すること。

年度途中の採用で職員が増えた場合で、かつ当該職員が研修を受けた場合は、職員数にカウントして差し支えない。

 

管理者は除外する → 賃金向上達成指導員やサービス管理責任者等と兼務している場合はどうか

直接的に利用者に支援を提供している場合は、参加者としてカウントすることができる

 

研修について、サービス管理責任者研修の受講などは、取り組み実績とすることができるか

できない

 

研修に登壇した職員が、同じ研修の別プログラムに参加した場合は、どう評価したら良いか

別プログラムの受講者として参加した場合はどちらの項目としても評価可能。

ただし、根拠資料として、受講したことを証明する書類等の写しを保管しておく必要があります

 

学会発表については、概ね30名を超える、とされているが、研修要件における参加者規模はあるか

明確な数値規定は定められていないため、地域の実情等を踏まえて適切に判断する必要があります。

 

視察・実習の参加や受け入れについて、同一法人内の事業所でも評価できるか

可能です。

ただし、視察、受け入れによる事業所間のノウハウを共有することによって、就労継続支援A型事業所全体の経営力や支援の質の底上げを意図しているため、同一敷地内の事業所などは、職員の兼務実態等を踏まえた慎重な判断が必要です。

 

特別支援学校からの受け入れは、評価対象になるか

特別支援学校からの受け入れは、評価にすることができません。

 

商談会について、代わりに個別企業への営業は評価対象になるか

通常の営業活動に加えて、商談会等への参加を評価するものであるため、単なる訪問営業、商談では評価になりません。

 

スコア表の公開

自治体や自立支援協議会等のホームページへの合同で公表することも、評価にできるか

評価対象になります。

 

地域連携活動における地域とは、どの程度の範囲か

利用者が、日常的に生活する地域圏内が想定されており、特定の範囲までは定められておりません。

 

まとめ「A型 基本報酬の算定(評価点区分)方法」

前年度において、所定の根拠書類をもとに活動を行い、記録を整備することで、加点されていくシステムとなりました。

取り組みの難しいものもあるかもしれませんので、まずはできるものから、1つずつ着実に取り組んでいくことをお薦めいたします。

当解説が、御社事業運営の参考になれば幸いです。

 

参考資料

厚生労働省,令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQandA vol.1

https://www.mhlw.go.jp/content/000763133.pdf

厚生労働省,令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQandA vol.2

https://www.mhlw.go.jp/content/000766855.pdf

厚生労働省,令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQandA vol.3

https://www.mhlw.go.jp/content/000770471.pdf

厚生労働省,令和3年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQandA vol.4

https://www.mhlw.go.jp/content/000776886.pdf

中央法規,障がい者総合支援法事業者ハンドブック2021(報酬編)「就労継続支援A型」

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