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実務経験証明書の発行依頼をするときのコツと注意点

実務経験証明書とは

働いた年数や日数を記録するための書類で、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者、児童指導員など実務経験を有する職種で働くために必要な書類です。

勤務していた事業所に連絡をして発行してもらうため、なにかとトラブルが発生しがちな書類でもあります。

 

  1. 本人が気まずい辞め方をしており連絡しづらいケース
  2. 過去の在籍事業所が多忙で発行してくれないケース

いずれかの場合にトラブルが起こりがちであるため、なるべくスムーズに取得する方法を解説しました。

 

 

なぜあの会社は実務経験証明書の発行を対応してくれないのか?

ここではよくある「動いてくれない」理由とその対処法について記述します。

 

①お願いした時間帯がよくなかった

月曜日の午前中や請求事務で忙しい毎月1日~10日、支援のピーク時間帯は、連絡をしても対応してくれない可能性があります。

 

【連絡を入れるときのポイント】

  • 要点(発行目的、勤務期間、日数、年数、送付先住所)を整理したうえでメールで問い合わせる
  • 昼休み~昼下がりなど、なるべく忙しくない時間帯に電話をする

できる限りの配慮のうえ発行の連絡をしてみてください。

 

②日数や勤務期間を調べるのがめんどくさい

事務処理が負担で先延ばしにされている可能性もあります。

もし可能であれば

  1. 実務経験証明書をしてほしい本人が
  2. 勤務していた当時の年金手帳や給与明細をもとに
  3. 在籍期間や勤務日数を調べてまとめたうえで

連絡することが望ましいです。

 

③書き方が分からないからめんどくさい

②ともリンクしますが、発行を希望する本人が

  1. 見本を作成したうえでpdf・入力用のワード or エクセルデータを送る もしくは
  2. 見本を作成したうえで、記入用の実務経験証明書(できれば今後も見据えて2~3枚程度)を郵送する

などすれば、スムーズに処理してもらえるかもしれません。

 

「正式な名称、役職名」で「直接支援や相談支援に従事していた」ことが分かるように記入してもらう必要があるため、記入例を同封してみてもいいでしょう。

(具体例は後述)

 

④人として嫌いだったから対応したくない(関わりたくない)

元も子もなく切ない理由ですが、辞め方が悪かった/職場で大きな問題を起こした場合などにしばしば聞く理由です。

 

この場合には、本人に代わって管理者や経営者が連絡してみてください。

案外対応してくれることもあります。

なお、費用はかかるうえ成功保証は出来かねますが行政書士に依頼することもできます(難易度によって着手1万円+成功時2~3万円程度など)。

 

⑤単に郵送手続きがめんどくさい

返信用封筒を同封しておけば、発行後すぐに書類を郵送するだけになるので親切かもしれません。

A4用紙2枚程度であれば120円切手でオッケーですが、念のため事前に郵便局などで重量を計ることをお薦めします。

 

⑥稟議に時間がかかっている

社会福祉法人や医療機関、多店舗展開の法人など、一定以上の規模の事業所の場合には社内決済で時間を要します。

1ヶ月程度かかる事業所もあります。

あらかじめ余裕をもって手配しておきましょう。

 

 

実務経験証明書発行においてよくあるご相談と回答

①勤務している・いた事業所に実務経験証明書の発行を知られたくないのですが…

  • 今いる会社に知られずに他事業所に転職したい
  • 独立したい

こういった場合には、たとえば

「(本当に受ける予定の)資格試験受験のために使用する」

というように説明する方法が考えられます(あくまで自己責任で)。

 

②過去に勤務していた事業所が潰れてしまったのですが…

役所によって取扱い方が異なるためなんとも言えませんが

  1. 法務局で閉鎖事項証明書を取得したうえで行政に相談する
  2. 閉鎖した会社の代表に連絡をして直接発行を依頼する
  3. 年金手帳や給与明細などともに実務経験証明書の代わりにならないか、官公庁と協議する

などの方法があります。

 

※2019年8月追記

様々なケースに関わってきましたが、やはり閉鎖した事業所でかつ、代表とも連絡がとれない場合は、実務経験として算定不可とされるケースが大半でした。

上記方法はあくまで「ダメもと」での交渉方法です。

 

③自分でこっそり作成しようと思うのですが…

絶対にやめてください。

バレたことによって指定取消はおろか訴訟沙汰になった例もしばしば耳にします。

 

 

実務経験証明書発行をお願いするときのトラブル回避策

気まずい辞め方をしてしまった場合、実務経験証明書取得の難易度は高くなります。

弊所のいくつかの成功事例およびあまりお薦めしない事例をご紹介いたします。

 

お薦めでない方法:労働基準法やその他法律を振りかざす

本記事にたどり着かれた方であれば、おそらく以下の法律をご存じかもしれません。

労働基準法22条1項は「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

労働基準法において、証明書発行については「遅滞なく定めること」と記載されています。

 

しかし、弊所の経験上これは悪手です。

「労働基準法第22条1項を振りかざして交渉してみたところ余計に担当者を怒らせて対応してくれなくなってしまった…」という相談を多く受けます。

 

同じくして「労働基準監督署にクレームを入れる」という説得手法も帰って火に油を注ぐだけのケースが多いですし、実際に労働基準監督署が動くこともマレです。

(労基署はよほど悪質な法律違反の疑いがない限り動かない傾向にある)

内容証明を起点とした法的措置は、最終手段にしておくことをお薦めします。

 

 

お薦めな手法:少し時間を置いてみる

  • 実地指導で違反が発覚して事業所が閉鎖してしまった
  • 喧嘩別れをしてしまった

こういった場合は、過去の事業所側としてもすぐに発行の対応することが難しいです。

前者ならまだしも後者の場合は、発行難易度が上がります。

 

揉めた直後だと、相手も感情が収まりきらずなかなか取り合ってくれません。

喧嘩別れの場合、自分自身にもいくらか落ち度があるかもしれません。

真摯な謝罪とともに

  • 1、2週間。あるいは1カ月以上間をおいて相談してみる
  • 別の人(まず管理者、ダメなら児発菅、事業責任者、法人代表など)にお願いしてみる

などの方法を検討してみてください。

 

お薦めな方法2:第三者にお願いしてみる

当事者同士だと双方ともに感情的になってしまい、平行線のままになりがちです。

勤務予定の法人代表者や施設管理者、行政書士に発行を依頼することで、先方も案外冷静になり普通に対応頂けることもあります。

(弁護士だとさすがにインパクトが強すぎるためか、かえって火に油を注いだという話を聞きます)

 

その他のポイント「書式はもう書式を持ってます」と言われたら…

念のため、たとえば

「〇〇県/〇〇市役所の発行している障害福祉用の様式」でよろしいでしょうか?

と確認してください。

ちゃんと分かっている事業所様であれば、話が通じるはずです。

違うと言われたら「専用の様式があるので、あわせて送付か、メールでデータを送付したほうがよろしいでしょうか」と確認してみましょう。

 

実務経験証明書の発行依頼時のコツとトークの参考

以下の点を明確にしておきましょう。なお、事業所への提出と本人保管用で2~3枚程度、発行依頼をかけておくとベターです。

 

  1. 電話者が経験書発行を希望する本人なのか代理人なのか、立場を明確にする
  2. いつからいつまで働いていたのか、あらかじめ明確にしておく
  3. なぜ実務経験証明書の発行が必要なのか、簡潔でも良いので伝える
  4. いつまでに必要かを伝える
  5. いつまでに発行できそうかを確認する
  6. 書式はもっているか、こっちから送るべきか伝える(正直、行政の書式を渡したほうが確実です)
  7. 相手方はたいてい忙しいので、最初はできれば以上の点を整理したうえでメール問い合わせにする

 

以上を会話としてまとめると、たとえば以下のようになります。

 

【実務経験証明書発行のお願いをするときのトークスクリプト参考】

  • あいさつ「以前そちらの〇〇事業所で〇〇(役職)として働いていた、〇〇と申します。その節は大変お世話になりました。」
  • 発行目的「障害福祉事業所で〇〇として働くために、勤務実績の記録が必要だと言われました / ◎◎の試験を受講するために、実務経験証明書の提出が必要です」
  • 勤務期間「私の在籍期間は平成〇年〇月〇日~平成〇年〇月〇日です」
  • お願い「こちらから、行政指定の書式と記入例をお送りますので、記載をお願いできますか?」
  • 発行手段「メールにてデータを送付します /  返信封筒と書式をご郵送いたします」
  • 発行期日めど「〇月〇日までに必要なので、お忙しいところを大変恐縮ですが、よろしくお願いします。」

 

口頭でのやりとりだと、退職時の理由や関係性によっては、双方ともに喧嘩腰になるかもしれません。

揉めてもいいことはないので、何か言われてもぐっとこらえてください。

 

 

 

実務経験証明書発行の依頼時に添付する添え状の参考

見本です。ご参考ください。

実務経験証明書 収集状況管理表

複数職員の実務経験証明書を発行しなければいけない場合や、過去の勤め先が多い場合など、どこに依頼をかけて、どのような状況であるか、進捗管理をするために使用しています。

 

 

留意事項

実務経験証明書の有効期間は原則半年です。

研修申し込みや指定申請時など、必要な時期が明らかになった際に、発行依頼をかけることを推奨します。

実務経験証明書発行依頼用の様式集は以下より取得できます。

・実務経験証明書の書式集(one drive)

 

実務経験証明書の発行をお願いする方が抑えておくべきポイントは以上です。

次に、実務経験証明書の発行依頼を受けた事業者様側が行うべきことやポイントなどをお伝えいたします。

 




 

【発行する方向け】実務経験証明書の発行依頼を受けた事業者様へ

たとえどんなイヤな辞められ方をしたとしても、たしかに5年以上経てば実務経験証明書の発行義務はなくなるかもしれません。

しかし、もしも依頼を受けたらできる限り発行対応をお願いします。

介護・障害・児童福祉における実務経験証明書はキャリアの証明そのものであり、今後の人生設計に直接影響を及ぼす大切な書類です。

 

一度は一緒に働いた仲間に対するねぎらいだと捉えて、実務経験証明書の発行対応をお願いします。

以下において実務経験証明書の発行方法について説明しますので、ご参考ください。

 

【発行する方向け】実務経験証明書発行における注意点

発行希望者本人による内容の代筆はできない

「こっちで必要な事項を記入しておくので、あとはハンコだけ押してください」では有効な書類として認められない可能性があります。

もし内容に明らかな不正があった場合、虚偽の書類作成へ加担した指摘される可能性すらあります。

お手数ですが本人から送付される記載例もしくは依頼内容をもとに貴社で再作成願います。

 

実務経験証明書の有効期間は原則6カ月

もし過去に発行済みだったとしても、有効期間が切れた場合は再度原本の提出を求めてくる役所もあります。

  • 原本証明した写しの提出でもいい
  • 原本証明のない写しの提出でもいい
  • 6カ月以内の原本でなければ不可
  • 1度でも法人として原本を提出できていれば原本証明のある写しでも良い 等

など、取り扱いは様々です。

大変お手数ですが、依頼があったときには再発行の対応をお願いします。

 

貴社を管轄する行政の様式を使用する

「様式が間違っている / 貴社の独自様式では記載内容が足りていない」と指摘を受けて再発行するのも二度手間だと思います。

もし障害福祉の実務経験証明書の行政様式を持っていない場合は、

「貴社エリアの管轄行政 + 障害福祉 + 実務経験証明書」

などで検索してみてください。

 

 

【発行する方向け】実務経験証明書の記載例

必ず以下のように記載しなければならない訳ではありませんが、過去の指摘をもとにまとめました。

記載方法の参考としてご活用ください。

 

補足1「〇番〇号」は発行元事業者が管理用に、必要であれば使う

法人として過去に発行した実務経験証明書を管理するための管理番号として、必要があれば記載します

 

補足2 発行者は「法人名+職種+代表者+法人実印」で

正しい発行者表記は「株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 実印 です。

まれに、発行者が間違えて「〇〇事業所 管理者 〇〇 印」とすることがあります。

この場合は担当者が勝手に発行しただけの有効な実務経験証明書だとして、認められない恐れがあります。

 

 

実務経験証明書発行のまとめ

発行をお願いする方としては、あまり法律論は振りかざさずに、あくまでお願いベースで。

もし関係がよくなく、平行線のままであれば(あくまでダメもとですが)第三者に手伝ってもらうことをお薦めします。

また、発行をお願いされた事業者様については、確かに発行義務がないケースもありますが、労いの意味を込めて、できる限り発行に努めて頂けると幸いです。

本項がお役に立てれば幸いです。

 

あわせて読みたい記事

実務経験証明書は、事業所でも重要なポジションの職員にとって必要な書類となります。

以下の記事もあわせて確認して、事業者、スタッフ相互にとって無駄手間を生じないようにしましょう。

 

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POSTED COMMENT

  1. みなみ より:

    はじめまして。今年サービスセンター責任者の習得を考え、以前勤めていた事務所に連絡をしたところ私が辞めてまもなく廃業したとの事。個人経営の小さな有限会社で代表者は「社印ももうないから出せない」とのことでした。このような場合、どのような方法があるのか分からずコメントさせて頂きました。

    • 吉川彰太郎 より:

      コメントありがとうございます。

      役所との要相談になりますが、書面で提示できなければ実務経験を証明できないため

      「閉鎖事業所分の実務経験は諦めるほかない」が通例ですね…

    • こまいちくん より:

      元代表者個人印でOKですよ。
      以前勤めていた情報は5年以内なら確実に行政に残っています。人員体制については届けてされているので。
      あとは、雇用保険であったり、社会保険であったり、雇用されていたことの補足資料提出など。方法はいくらでもあります。
      役所に相談提案して、こうしようと決めたらいいだけです。
      あきらめるとしたらもう大昔の話しだったときなどでしょうね。

      • 吉川彰太郎 より:

        こまいち様
        コメント補足ありがとうございました。たしかに疎明資料用意して行政と相談、提案は有効な手段でございます(2021年8月)

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