制度解説

難易度の高かった申請事例

行政書士の業務は①法が掲げる許可条件に照らし合わせたうえで、②該当するモノ・書類等を用意して頂き、③必要な書類を作成して、④事業許可を取得することです。

指定申請においては「書類を受け取ってもらう=受理される」までが、一つの到達点です。

受理のためには許可条件だけでなく、担当官からの指摘事項を全て解消しなければなりません。

無理やり指摘事項を解消しても、行政の内部審査の段階で跳ねられた場合は、不許可となる可能性もあります。

イレギュラーな案件の場合は指定許可番号が下りるまでは気を抜くことができません。

 

指定申請において困難だった事例

事務スペースが確保できてないため指摘を受けた(放課後等デイ・児童発達支援)

事業者様によっては「どうしてもここで開業したい」というくらい、地域的な相性、外観・内観、立地ともに条件の良い物件を見つけることがあります。

何故かこういった物件に限って「設備基準をギリギリ満たしていない可能性」がありがちです。

本件においても、指導訓練室等は十分に確保できていて、当初予定していたフロア(ほぼ収納庫)では「事務スペースとして認められない」と指摘を受けました。

扉を工事して設置すればよかったのですが、予算の都合もあり断念しました。

事業者様に対して事務スペースとして認められるための条件をお伝えし、事務所化できそうなスペースがないか精査して頂き、必要な備品を設置したうえで、充分な広さ、事務作業に支障がないことを担当官に説明して、書類受理にいたりました。

書類受理されても現地調査の段階で跳ねられるのではないかと、現地調査完了までヒヤヒヤしていた案件でした。

【ポイント】

  • 候補物件があった場合は、ハンドブック・各自治体指定の手引き等をもとに部屋割りを満たせそうか確認すること
  • 満たすことが難しい場合は、担当官が求める基準・実務上の取扱いをくみ取り、適合したスペースを(なんとか)確保すること

 

サービス管理責任者の配置が出来ないのでは、と指摘を受けた(共同生活援助)

許可基準を満たしていても、実務に支障があると判断される場合、書類受理されないことがあります。

中核市(愛知県で言えば豊田市、豊橋市など)は、担当官独特の考えをもって書類をチェックすることもあります。

就労継続支援A型・B型とグループホームのサービス管理責任者は、一定の条件を満たせば兼務することが可能なのですが、ややマイナーな論点であるため、担当官に対しての説得・交渉に時間がかかりました。

担当官がノーといえば、基準上認められた申請内容でも受理されないこともあります。

担当官との交渉が決裂しないようあくまで真摯な対応に努めて、参考とした基準や厚生労働省を示し、事業所様に対しても法令・実務上支障がないよう運営していただくことを誓約したうえで、担当官のもとへ事業者様と予定サービス管理責任者様に同行してもらいました。

担当官から悪い印象をもたれては、ここまで対応を頂く前に、申請がとん挫していたかもしれません。

 

【ポイント】

  • 基準を満たしていても、担当官が納得しなければ書類が受理されないこともある
  • 口頭での説明では納得しないため、説明したいことがあれば必ず根拠法令・制度を書面で示す
  • 他自治体・公官庁の判定を引用する場合は照会先、日時、担当者名を控える

 

機能訓練室・多目的室の広さが基準を満たしていない可能性があった(就労継続支援A型・B型)

既存の店舗を就労継続支援事業化する場合、機能訓練室・多目的室それぞれで必要な広さを確保しなければならないため。面積基準ギリギリな場合があります。

レーザー測定器で計測すると、測る場所によっては面積割れを起こしているような物件でした。

自治体によっては設備の形態(備品が固定されているか、可動式か)によって、有効面積外、範囲内とするなど、取扱いが異なることもあります。

指定窓口の考える設備基準に照らし合わせたところ、求められる面積分は確保できていることが分かったため、指定申請に臨むとこができました。

翌年度からは担当官が変わり、設備基準が厳格化されたので、滑り込みセーフな案件でした。

【ポイント】

  • 許可基準は、あくまで総則であるため実務と照らし合わせると懸念点がでてくる
  • 申請前に不明点があれば必ず指定担当に問い合わせる
  • 担当官が変わると、実務上のルールも変わる可能性がある

 

実務経験証明書の収集の難航・記載不備(放課後等デイサービス・就労継続支援B型)

資格者確保のタイミング等によっては実務経験証明書の収集が難航することもあります。

予定資格者が過去に在籍していた事業所に経験書の発行依頼をかける場合、中には独自の書式で送られることもあります。

本件の場合も、過去の事業所が発行した実務経験証明書では、年数や職種、業務内容の不備が見られ、指定申請月中の書類受理が難しくなりました。

担当官から許可条件にかかる重要な書類であるため、正式なものがないと申請書類を受理しないと指導を受けたからです。

「再発行依頼をかけた日時」「書類取得の予定日」「万が一期日までに書類を確保できなければ、いったん指定を取り下げる旨」を担当官に伝えたことで、猶予期間を設けて頂き、経験書を確保できたことで指定申請に間に合わせることができました。

その他にも「行政書式では日数要件の確認がとれない」「過去の事業所が潰れてしまい、発行依頼をかけられない」「いくら伝えても経験書を発行してくれない」など、実務経験証明書の発行については、様々なトラブルが付き物です。

【ポイント】

  • 実務経験証明書の発行依頼時は、記載するべき内容をよく理解したうえであらかじめ書式を先方に渡す
  • 先方事業所が忙しいことも理解したうえで、真摯にお願いをする。可能な限り先方の手間を省いておく。

 

作業訓練室での行動計画に疑義が出た(就労継続支援B型)

就労系B型や移行支援の場合、単独型であれば20名以上の訓練室・多目的室を確保しなければなりません。

20名を受けられるだけの広さがあれば、許可条件自体は満たすのですが、事業内容によっては「本当にこれだけの人数で、この部屋で、この事業内容が実現できるのか?」という疑義が生じることもあります。

いくら許可基準を満たしていると伝えても、担当官の指導内容に沿う、もしくは事業内容に納得されないと書類は受理されません。

(行政手続法上の「行政指導」と言われる行為で、指導に従わないことで書類を受理しないとしても、なんら違法なことではありません)

就労継続支援B型の場合は、詳細な事業計画までは要求されませんが、担当官の指導内容の意図をくみ取り、指摘された点については問題なく対応できることを、書類としてまとめたうえで説明することで、書類受理にいたりました。

【ポイント】

  • 必ずしも許可基準を満たしているから書類が受理されるとは限らない
  • 書類を受理してもらうためには、申請書類一覧外の書類を作成することもある
  • 担当官も、真摯に説明すればこちらの主張を聞いてくれることもある

 

初めての分野についてはアウトソーシングを検討する

初めて障害福祉事業の指定申請を取得される場合や、これまでとは異なる分野の障害福祉事業で指定をとる場合は、選択肢の一つとしてアウトソーシングの検討も視野にいれることをお薦めします。

一つの目安として、事業内容や資格者、物件の目途がたった時点から、行政との協議を重ねることが、無理のない開業準備に繋がります。

自力での指定申請を予定している方は以下の記事もご参考ください。

・自力申請する前に抑えておきたいリスクとポイント

ABOUT ME
吉川彰太郎
障害福祉施設の開業、運営コンサルティングに特化した行政書士です。 障害児者やその家族の人生を支えるべく、事業所がより質の高いサービスを提供できるよう様々な情報発信を行います。

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