こんにちは、ヨシカワです。
弊所は愛知県、名古屋市エリアで、障害福祉を中心に活動する行政書士事務所です。
今、世間ではグループホームでの起業が静かなブーム(?)になっているようで、しばしば「儲かると聞いて調べているのですが、実際のところどうなんですか」というお問い合わせを多くいただくようになりました。
そこで、グループホームの収支をご自身で考えるための参考記事を作成いたしました。
事業計画の参考になれば幸いです。
グループホームの全体像をおさえたい方は、以下の記事もご確認ください。
お手元に事業者ハンドブックをご用意のうえ、読んでいただけるとより理解が深まります。
気になるところから読む
グループホームの入金額計算
収支シミュレートを行うための前提知識
「世話人軸×利用者軸」2つの要素から、報酬額が決定されます。
前提1:世話人の配置数によって、報酬額が変動する
世話人軸です。
「手厚い支援を提供する事業所に、多くの報酬を」が制度の基本設計であり、2019年時点では世話人配置4:1が最も高額となります。
それぞれの意味は、以下のとおりです。
- 4:1 ⇒ 入居者4名を、1人の世話人で対応する
- 5:1 ⇒ 入居者5名を、1人の世話人で対応する
- 6:1 ⇒ 入居者6名を、1人の世話人で対応する
申請の時点で、この世話人配置を決めることになりますが、あとから届け出によって変更もできます。
参考:2019年時点の報酬額
以下のpdfがきれいにまとまっておりますので、ご紹介いたします。
・https://www.fukushisoft.co.jp/wp-content/uploads/seikyu-siryo/h30/etc/h30_etc_gh.pdf(引用元:福祉ソフト)
補足:世話人とは
世話人 ⇒ 支援計画にもとづき、食事や掃除など入居者の身の回りをお世話する人です。
世話人、もしくは生活支援員のうち、1名以上は常勤職員(例:実働 週40時間 等)を配置しなければなりません。
前提2:どんな利用者が入居するかによって、報酬額が変動する
利用者軸です。
申請時点から見込み利用者が具体的にいる状態を求める地域と、仮名で良い地域の2つがあります。
報酬額は、どのような入居者が利用するかによって変わり、各入居者ごとに報酬額が決まります。
例)4名定員(区分4、区分3の入居者2名ずつ)のホームの場合
- 区分4×2名 ⇒ 467単位×2名×地域10円 = 9,340円/日
- 区分3×2名 ⇒ 381単位×1名×地域10円 = 7,620円/日
合計16,960円/日 ⇒ 508,800円/月(30日稼働)
報酬額は以下のとおり。
・https://www.fukushisoft.co.jp/wp-content/uploads/seikyu-siryo/h30/etc/h30_etc_gh.pdf(引用元:福祉ソフト)
前提3:どんな利用者が入居するかによって、スタッフ配置が変わる
入居者の支援区分によって、必要な生活支援員の数も変わってきます。
補足:生活支援員とは
入居者の食事、入浴、排せつ介助、生活相談にのるなど、より入居者との直接的な関わりの多い仕事です。
・求人例「グループホーム 生活支援員 求人」(indeed)
前提4:家賃等をいくらに設定するかによって、月の売上が変わる
給付費に加えて、家賃や利用実費を設定することができます。
利用実費については、利益を出すことはできず、あくまで実費負担の範囲にとどまります。
・グループホームガイドブック(群馬県高崎市)⇒実際のホームの概要がまとめられています
・障害福祉サービス等における日常生活に要する費用の取扱いについて(厚生労働省)
前提5:加算によって、月の売上が変わる
基本給付費だけで採算を合わせるのは難しいかもしれません。
算定できる加算は内容を理解したうえで算定していきましょう。
実践:基本となる収支の計算
入居者5名小規模ホームの場合で算出してみます。
あくまで、ここまでの解説を補足するための試算につき、このまま事業計画をつくっても100%うまくいくことはありません。
例)定員5名の小規模ホームの入金額計算
前提
- 定員5名(区分3の入居者2名 + 区分2の入居者3名)
- 世話人配置 4:1
計算
区分3 1日あたり(単位381×地域10円) × 30日稼働 + 入居費6万円(家賃3万円+食費1万円+水光熱費1万円+家賃補助1万円) @2名 = 328,600円 / 月
区分2 1日あたり(単位292×地域10円) × 30日稼働 + 入居費6万円 @3名 = 442,800円 / 月
合計 771,400円/月
人件費の計算
現時点では、流し読みで構いません。
グループホームの人員基準解説はこちらをご参考ください(作成中)
- 管理者兼サービス管理責任者 200,000円/月
- 世話人(常勤)1名、パート1名(40時間/月) 18万円 + 4万円 220,000円/月
- 生活支援員 パート1名(32時間/月) 32,000円/月
※夜間はアルソックなど警報設備で対応のケース
合計 452,000円/月
その他主な経費構成要素
(建物賃料 / 水光熱費 / 通信費 / 賞与・手当/各種保険/積み立て等)
- 建物:120,000円/月
- 水光熱費:30,000円/月
- 通信費:10,000円/月
合計 160,000円/月
着地予想:+159,400円/月
当然、なにかと支払いはでていきますので、実際にはもう少し下がる可能性もあります。
したがって夜間専従者を配置したうえで、複数のホームを同時に経営するなど、法制度を理解したうえでの事業計画作りが極めて重要な事業だといえます。
余談:グループホームで年商2,500万円?
「というセミナーを聞いたのですが、本当ですか?」と質問いただいたことがあります。
試しに皮算用をしてみましょう。
(基本入金額)
年商2,500万円 ⇒ 月商209万円
区分3の利用者 (単位381+夜間支援269)×地域10円×30日+入居費6万円= 255,000円/月
区分3の利用者×10名 = 月商255万円/月 ⇒ 年商3060万円
(基本経費)
管理者兼サービス管理責任者 = 月25万円/月
世話人 入居者10名 ÷ 4 = 2.5人 社員20万円 + パート240時間×900円=21.6万円 合計41.6万円/月
生活支援員 入居者10名 ÷ 9 = パート176時間×1,000円 = 合計17.6万円/月
夜間専従職員 夜勤1.3万円×30日×2名 = 合計78万円/月
家賃 15万円×2棟 = 合計30万円/月
水光熱費3万円×2棟 = 合計6万円/月
通信費 = 合計3万円/月
その他雑費 = 5万円×2棟 = 合計10万円/月
総経費 211.2万円
着地予想 +43.8万円/月
(その他:将来の積み立て、職員の賞与・手当、車両費、販促費、事業保険、専門家報酬等)
グループホーム単独でなくとも、たとえば生活介護や就労継続支援B型事業などポートフォリオとして組めば年商1億のベースに乗せる皮算用もできるかもしれません。
日中は生活介護や就労継続支援事業所で活動して、生活基盤はグループホームとするなど。
ただし、以下の点から上記試算にもとづく経営は容易ではないことが分かります。
グループホーム経営の課題例示
- どのような入居者が利用するかは、実際の地域のニーズにより左右される(収支計画が大きく変わる可能性あり)
- 10名のホームを行えるだけの物件があるとは限らない(新築で建てる場合は別)
- 30日フル稼働になるとは限らない(入院、週末の帰省など)
- 管理者以下職員に運営を丸投げするのは安全管理、コンプライアンスの面からきわめて危険である
- 事業を拡大したくても、職員が集まりにくい
まず行うべきこと
地域の実情に根差した現実味のある計画を立てるためにも、まずはフィールドワークから取り組んでみてください。
申請の時点で、利用者名簿の提出を求められることもあります。
調べることは
- どんな建物があるか?
- どんな制度はあるか?補助金は?
- どのくらいのレベル感の障害者の入居ニーズがあるのか?
- 地域の障害者や家族、相談支援機関はどのようなことに困っているのか?
などです。
動機は様々だと思いますが、フィールドワークをとおして「なぜグループホームを経営したいと思ったのか?」理由をご自身の言葉で明確に言語化できるよう常に考え続けていきましょう。
まとめ
5~6名程度の小規模ホーム1つだと、収支としては赤字になる可能性が極めて高いです。
10名~20名程度の規模までいくと年商として1億近くに到達する可能性がありますが、
- 24時間365日入居者のサポートをする(オーナーとしてそこまでの責任を持てるか)
- 10名以上の入居者をまとめ上げるだけのスタッフ管理、質問対応に応えられるか
- 金儲けのためだけだと、そもそも福祉事業は割に合わない
ということを抑えておくといいでしょう。
無資格、未経験で簡単にうまくいくような事業ではありません。
(そのような誤解を招くセミナーがあると耳にすることもありますので、ご注意ください)
実現したいビジョンのもと経営層とスタッフ層が一丸となって事業を作りこんでいく視点がなによりも重要だと考えます。
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